非弁行為ってなに?
非弁行為とは、弁護士ではない第三者が営利目的で弁護士業務を代わることを指します。
非弁行為は特別に許可される場合を除き、一律に禁止されています。
弁護士法第72条に基づき、非弁行為を行った者は、2年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処せられます。
非弁行為同様の意味で非弁活動という言葉が使われることもありますが、いずれも法律によって定められている業務を違反していることに相違ありません。
関連リンク:弁護士法第72条
非弁行為に当たらないケース
法律によって特別に許可されている対象は、下記となります。
1) 弁理士…弁理士法6条の場合と特定侵害訴訟についての訴訟代理権をもつ
2) 司法書士…簡易裁判所において請求額が140万円を超えない範囲の民事訴訟等の代理権をもつ
3) 税理士…租税に関する事項について補佐人として裁判所において陳述をすることができる
4) 行政書士…行政庁に対する審査請求、異議申し立て、再審査請求等の不服申立て手続の代理ができる
5) 債権回収会社…法務大臣による厳格な規制のもと、債権の回収業務を行うことができる
これらに当てはまらない弁護士業務の代理は全て非弁行為として認識されます。
また、弁護士法第72条の条文では、下記のような一文が書かれています。
「私利をはかってみだりに他人の法律事件に介入することを反復するような行為を取り締まれば足りるのであって、同条は、たまたま縁故者が紛争解決に関与するとか、知人のため好意で弁護士を紹介するとか、社会生活上当然の相互扶助的協力をもって目すべき行為までも取締りの対象とするものではない」
したがって、非弁行為はあくまで営利目的ある種の肩書きを名乗ることのできる立場を持った人が弁護士業務を代行することにのみ適応されるものだと認識しましょう。
関連リンク:弁理士法第6条
ネット業者が削除するとなぜ非弁行為?
ここで、インターネットにおける誹謗中傷のトラブルが起こった際に、その誹謗中傷の書き込みを削除するなどの対策をするインターネット誹謗中傷被害対策企業が非弁行為をおこなっていることになる例を挙げましょう。
非弁行為の条件とネット業者がおこなっている要件が一致
先にご紹介した非弁行為の条件では、非弁行為は“営利目的ある種の肩書きを名乗ることのできる立場を持った人が弁護士業務を代行すること”を指します。
インターネット業者が何をしているのか具体的に考えてみましょう。
依頼主が誹謗中傷のあった投稿をできる限り不特定多数の人に閲覧されることを避けたいとした場合、その投稿自体を削除する行為は、弁護士の業務となります。
さらに、この削除についてインターネット業者は依頼主から報酬を得ます。
したがって、非弁行為の対象となることがわかります。
ちなみに、逆SEOの技術などを用いて投稿が検索で表示されないようにすることについては、根本的な削除にあたる交渉などをプロバイダやサイト管理者におこなっているわけではないので、非弁行為にはあたりません。
投稿の「削除」は法律事務
投稿の削除は、どんな内容であれ第三者が与えられた表現の自由のもと投稿したものを第三者の意志によって削除することです。
そこには根拠が必要で、いわゆる感情に訴える理由などによる削除はほとんどの場合認められません。
それが個人同士の話ではなくSNSや投稿サイトなど別の管理者がいる環境で起こったことなら、なおさら削除の根拠を示すことは難しくなります。
投稿の削除を依頼する際は、そうした困難を経てサイト管理者が投稿削除という判断をとることを選ばざるを得ない根拠が必要です。
それが、法律によって権利侵害に当たると説明することなのです。
この説明は、法律に責任を負える立場の者でなければできないものです。
したがって、投稿の削除は弁護士にしかできない業務なのです。
合法をうたっている業者には注意が必要
こうした背景から、いかなる理由においても弁護士以外の立場の者がインターネットにおける投稿を削除する、または削除にあたる交渉を代理することは非弁行為にあたります。
理由をつけて合法だと言っている業者もいますが、例外はありません。
むしろ合法だと宣言している会社こそ、非弁行為をしながらも依頼人から報酬を得ている悪徳業者です。
あくまで検索表示に対するアプローチなどを業務とする誹謗中傷対策会社に依頼するようにしましょう。
なぜネット業者で非弁行為が横行するのか
なぜこのようなインターネット業者による非弁行為が横行しているのでしょうか?
その背景は、端的に述べれば「お金になる」ということと「グレーである」ということが挙げられます。
ネットでの誹謗中傷が増加しているから
インターネット上ではさまざまなSNSやコミュニティ、口コミサイトなどが増加しており、それぞれの場で誹謗中傷のトラブルは続発しています。
企業・個人関わらず、匿名性を保持していれば相手を貶める発言を繰り返せる場の増殖は、同時に被害者も増やしているのです。
こうした被害者のなかには黙するほかない人もいますが、誰かに相談し、この状態を改善したいと願う人がほとんどです。
そのニーズに応える形で増えているのが、誹謗中傷対策業者です。
誹謗中傷によって困っている依頼人は、とにかく早く解決したいと願っていることがほとんどで、精神的にも深いダメージを負っているケースが多く、正しい判断がつかない精神状態に追い込まれていることもあります。
そんな依頼人に対して、本人の望む希望を叶えることと引き換えに高額な報酬を請求するネット業者は、通常の場合よりも高額の請求が承認されやすいということをよく知っています。
非弁行為という知識がない人にとっては、誹謗中傷に関わる投稿を削除してくれ、そのうえ検索でも表示されないようにしてくれる誹謗中傷対策会社があったとすれば、頼りがいのある存在に見えることでしょう。
また、弁護士の存在や業務内容を知らない人にとっては、唯一の相談窓口にも見えるかもしれません。
こういった「他には頼めない」という感覚をもたらすことで増え続ける誹謗中傷のトラブルを収益につなげているのが、悪徳ネット業者です。
なりすましの証拠がとりづらいから
非弁行為をおこなっているネット業者は、依頼人本人や弁護士になりすまして投稿の削除依頼をします。
まず本人になりすます場合、単純な行為の代行をしているだけで、法律の専門的知識がない会話でも通じてしまうため、ネット管理者側は本人であるかどうかの判断が非常につきづらいです。
また、弁護士のなりすましでも、弁護士がどのような交渉をしていくかということを知っている業者であれば、あたかも弁護士そのものであるかのように交渉を進めることができます。
こういったなりすましはなりすましだと断定することが難しいため、非弁行為がおこなわれていることを立証することができません。
最終的に投稿が削除されるのならば問題ないと考える依頼人もいるかもしれませんが、非弁行為を知りつつもネット業者に投稿削除を代行することは、実は何一つメリットがありません。
ネット業者の非弁行為を避ける理由
ネット業者が代行した第三者による投稿削除の交渉について、非弁行為とみなされることは削除依頼を受ける立場であるメディアやサイト管理者も既に広く知っています。
したがって、「あやしい」と感じたものに関しては投稿削除を拒否する権限があります。
また、投稿削除に関しては、初回の挑戦で投稿削除ができなかった場合、追加で費用を請求してさらにプッシュをかけるなどの方策をとる悪徳業者もおり、この場合依頼人は更に高額な費用を支払わなくてはならなくなります。
つまり、非弁行為をおこなうネット業者は成功しなければより多くの請求を求めることができるため、依頼人の「早期に解決したい」という願いとは裏腹に、あえて投稿削除を失敗するということもできるのです。
もちろん、非弁行為であると見破られた場合はサイト管理者側から削除対応の許可がおりないため、結局投稿は削除されません。
したがって、ネット業者に非弁行為となる削除依頼を任せても、失敗する可能性が高まるだけでなく、高額請求を求められるケースすら生み出してしまうのです。
削除依頼は弁護士に依頼しなくてはならない
このような理由から、ネット業者による削除依頼は依頼人側がリテラシーを持って避けなければならないと言えるでしょう。
では、誰に相談するのが適切なのでしょうか?
削除依頼は弁護士の業務
インターネット上における投稿削除は弁護士の業務となります。
したがって、投稿を削除してほしいということが問題解決に必要ならば、まずは弁護士に相談することから始めましょう。
ちなみに削除依頼に関しては先に述べた非弁行為という概念があるため、弁護士以外に相談しても、それが営利目的で業務としておこなわれる場合、解決することはありません。
弁護士に依頼するメリットを紹介
弁護士に依頼することは、先にご紹介したような悪徳業者に無駄な報酬を支払ってしまうという状態を避けることができます。
もちろん依頼から対応までの費用はかかりますが、おこなったことに対しての報酬以外が請求されることはありません。
また、インターネット問題に強みをもった弁護士はさまざまな誹謗中傷に関するトラブルの詳細を知っているため、どんな対策方法がベストなのかを判断できるプロフェッショナルであるということもメリットでしょう。
さらに、望んだ解決まで導けなかった際には、裁判での問題解決方法も含めて説明およびサポートをしてくれます。
根本的な問題解決をしたいならば、弁護士に依頼することが得策と言えるでしょう。
弁護士ができることを紹介
弁護士ができることは、おおまかに分けて下記となります。
1)被害の内容が法律に基づいた権利侵害と認められる案件なのかを判断
2)投稿を削除
3)投稿者の特定
4)損害賠償の請求
弁護士は逆SEOなどIT技術に関わる施策を代行することはできませんが、法律に則って誹謗中傷をした相手に対する施策を代理・遂行することはできます。
そのどれか一部に対応するような窓口や、事件性のあった時のみ対応を期待できる警察なども存在しますが、総合的な判断や代理を任せたいならば弁護士が最大の力を発揮してくれることでしょう。
また、これらの業務内容のあいだで生じる交渉や、起こった状況の完結な説明などは、プロフェッショナルの仕事だからこそスムーズにおこなえる最大の強みと言えます。
この点は、誹謗中傷によって傷ついた、あるいは怒りを感じている当本人だと感情があらわになって失敗してしまう部分でもあります。
弁護士という第三者に頼ることは、物事の解決に向けた客観的視点によるマネージャーがつくということにも等しく、解決は早くなることが期待できます。
誹謗中傷の非弁行為に関するまとめ
インターネットの投稿に誹謗中傷が見られた場合、その投稿を削除したいと願うのは誰もが一緒です。
しかし、その投稿削除という行為を代理して良いのは弁護士だけです。
投稿削除の行為を通じて利益を出そうとしている悪徳業者には、みずからが発注しないということを心がけておく必要があります。
インターネットによる誹謗中傷が起こった場合は、まず弁護士に相談してみると良いでしょう。
弁護士は削除依頼を合法にできるだけでなく、裁判対応などもおこなってくれます。
総合的な解決としては弁護士に相談することが一番あなたの役に立ちますので、今もし誹謗中傷などで悩んでいることがある場合は、気軽に相談してみましょう。