インターネットは便利なツールとして生活に根付いていますが、その反面で誹謗中傷の被害も少なくありません。
具体的な解決策が分からないまま放置してしまうという人も多いでしょう。
しかし正しい知識を身につけておけば自分の身を守る事が出来ます。
この記事ではネット掲示板における誹謗中傷やネガティブな書き込みへの対処法を、個人編・弁護士編・削除方法や特定方法・必要な費用などを踏まえて総合的に見ていきましょう。
削除申請を自身で行う場合
インターネット上の悪質な書き込みに対する削除申請は個人で手続きを進める事も可能です。
プライバシーに関わる内容である場合も多いので、専門家などに相談しづらいという人も少なくありません。
まずは個人で削除申請を行うメリットやデメリット、手続きをスムーズに進めるための注意点などを確認しておきましょう。
メリット・デメリット
個人で手続きを行う大きなメリットは「費用がかからない」という事です。
削除申請の手続き自体には費用がかからないので、実際に必要なのは郵送代などの実費のみになります。
複数の書き込みに対して削除申請を行ったとしても、自分の懐を痛める心配はありません。
誹謗中傷によって精神的なダメージを被った上に経済的な負担まで増えてしまってはたまったものではないでしょう。
ただし、個人で削除申請を行う場合にはある程度専門的な知識を身につけなければならない点がデメリットです。
削除申請の手続きは正しい手順を踏んで必要事項を満たした書類を送付しなければ応じてもらえないケースも少なくありません。
法律的な専門知識に基づいて作成しなければならない書類もあるので、こうした書類作成に不慣れな人が個人で手続きを行うとそれなりに労力や時間が必要になるのです。
インターネットの誹謗中傷を弁護士に相談するメリット
インターネット上で誹謗中傷の被害を受けた場合、弁護士に相談することが一般的とされているのは何故でしょうか?弁護士に相談することのメリット、他の相談窓口との比較、更には弁護士に相談した際の費用についてもご紹介します。
申請を通すためのポイント
ネット上の誹謗中傷は被害者が削除申請を出せば必ず対応してもらえるとは限りません。
サイトの運営側としては無闇に書き込みを削除してしまうと利用者からの反発や権利侵害に繋がってしまうのです。
こうした事情から削除申請への対応を行うか否かは基本的にサイト運営に委ねられています。
ただし、削除依頼のポイントを押さえて申請する事で対応してもらえる可能性は上がるのです。
下記のようによく見られる失敗例を基にしてポイントを把握しておきましょう。
よくある失敗例として多いのは、法律的に問題が見られない書き込みに対して削除申請を行っているという事例です。
たとえ特定の書き込みによって自分が不快感を覚えたとしても、その書き込みを削除するためには「法律的な根拠」が必要になります。
違法性の無い書き込みに対しては削除申請という手続きは意味を成さないのです。
申請書類の不備というケースもサイト運営者が削除申請に対応しない原因として多いです。
書き込みの削除をサイト運営者に申請するには、原則的に申請者の住所・氏名・メールアドレスなどの個人情報が必要となります。
これに加えて各サイトの利用規約で定められている必要事項(削除申請対象の書き込み情報やURL等)を書類や申請フォームに記載してなければ、運営側は書類不備として対応してくれません。
また、削除申請の方法は各サイトによって異なるという点にも注意が必要です。
各サイトが定める手順を踏んでいないがために、申請理由や記入事項に不備がなくても受理されないという事例も珍しくありません。
どのサイトでも単純に「問い合わせフォーム」から申請すれば良い訳ではないのです。
申請を行う前にはまずサイトの利用規約を熟読しておく事が重要と言えるでしょう。
上記3つの例が個人で削除申請を行った際に失敗しやすいポイントとなります。
「削除申請の法的正当性」「必要事項の記入漏れ」「削除申請の手順」に気をつけて手続きを行えば、サイト管理者に対応してもらえる可能性が上がるでしょう。
爆サイの削除申請が通らない!?これを読めば解決できます!
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掲示板別!削除申請の方法【個人編】
個人で手続きを行う際のメリット・デメリットは上記の通りですが、その中でも触れた通りサイトによって削除申請の方法が異なるという点には十分注意が必要です。
以下では代表的な匿名掲示板の削除申請方法を紹介するので、個人で手続きを行いたいという人は参考にしてみてください。
5ちゃんねる(旧2ch)
5ちゃんねるでは「メール」と「専用フォーム」という2パターンの削除申請方法が用意されています。
メールの場合は「meiyokison@5ch.net」というアドレスへ、専用フォームでは「削除要請板」もしくは「削除整理板」へ削除申請が可能です。
原則的にはどちらの方法を選ぶかは申請者の自由ですが、5ちゃんねるの場合は専用フォームといっても実際はサイト内掲示板の一部となっています。
そのため、「削除要請板」「削除整理板」に削除申請を行った場合は掲示板内に申請内容が公開されてしまうので注意が必要です。
万が一加害者やその関係者が申請内容を見た場合、被害者への嫌がらせが過激化してしまう可能性もあります。
したがって5ちゃんねるへの削除申請は基本的にメールで行うのがおすすめです。
爆サイ
爆サイではスレッド・レスが表示されている画面の最下部に「削除依頼フォーム」が設置されています。
「最新レス」「重複スレの報告」といった項目と並んで表示されているので見落とさないように気をつけましょう。
申請フォームではメールアドレスや削除を希望するレス番号、削除希望の理由などの記入が求められます。
記入漏れはもちろん、削除希望の理由に正当性がないと判断された場合は申請が受理されません。
送信前に記入漏れがないか見直し、削除希望の理由に法的な根拠があり論理的に問題ないかしっかり確認しておきましょう。
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Yahoo!掲示板
Yahoo!掲示板の場合は掲示板内にある各コメントの右上に矢印の様なマークが設置されています。
この矢印をクリックするとコメントやユーザーに対するいくつかのアクションが表示されるので、コメントの削除を申請する場合には「違反報告」を選びましょう。
違反報告フォーム内には選択式の「違反項目」と、記述式の「報告内容(削除を希望する理由)」が用意されています。
これらを選択・記入して送信すると運営がサイトのガイドラインと照らし合わせ、違反性が認められれば該当の書き込みが削除されるという流れです。
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削除申請を弁護士へ依頼する場合
ここまでは個人で削除申請を行う場合の解説でしたが、手続きを弁護士に依頼するという人も少なくありません。
専門家に依頼すれば迅速かつ効果的に問題を解決する事も期待出来ます。
ここからは弁護士に削除申請を依頼する際のメリット・デメリットや費用について見ていきましょう。
メリット・デメリット
ネット上の誹謗中傷問題を取り扱う専門家には、弁護士の他にも民間業者という選択肢もあります。
しかし、法律的に削除申請の代理人を務める事が出来るのは弁護士だけです。
弁護士はサイト管理者に対して削除申請を行うだけでなく、対応を渋られた場合には発信者情報開示請求という法的な手続きをとる事も出来ます。
民間の誹謗中傷対策業者では基本的に「検索順位を下げる」という手段を講じる事しか出来ません。
書き込み自体を削除出来ないため、根本的な問題解決にはならないのです。
もちろん弁護士であれば書き込みの削除に対して有効な手段を講じる事が出来るので、誹謗中傷問題の根本的な解決が期待出来ます。
また、民間業者による検索順位操作は場合によっては継続的に行う必要があるため、中長期的に見るとコストがかさんでしまう可能性も高いです。
弁護士の場合は初期費用がそれなりかかりますが、書き込みが削除されればそれ以降に費用が発生する事はありません。
削除申請を弁護士に依頼するメリットには上記のような事が期待出来ますが、「弁護士費用がかかる」というデメリットも忘れてはいけません。
弁護士費用は決して安いものではないので、必要になる費用と削除が成功した際の見返りが見合っているかを熟考するようにしましょう。
ネットの削除業者が誹謗中傷を削除するのは非弁行為
非弁行為ってなに? 非弁行為とは、弁護士ではない第三者が営利目的で弁護士業務を代わることを指します。 非弁行為は特別に許可される場合を除き、一律に禁止されています。 弁護士法第72条に基づき、非弁行為を行った者は、2年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処せられます。
どれくらいの費用がかかるの?
出来るだけ効率的に誹謗中傷問題を解決したいものの、実際に弁護士費用がどの程度必要になるのか不安に感じる人も多いでしょう。
原則的に弁護士費用は各事務所が独自に決めているので、具体的な金額は依頼先の法律事務所に確認する必要があります。
しかしある程度相場が決まっているので予め把握しておくと事務所選びの助けになるでしょう。
一般的に裁判を行わずにサイト管理者へ削除申請を行う場合の弁護士費用は1サイトにつき2万円程度と言われています。
ただし、事務所によっては削除申請を出す書き込み1件につき2万円というケースもあるのでよく確認しておきましょう。
法律事務所では利用者が抱えている問題を正確に把握して解決方針を打ち出すため、原則として事前相談を行っています。
相談料は30分5000円程度もしくは1時間あたり約1万円で設定されている場合が多いです。
相談料は初回に限り無料としているところも多いので、出来るだけ費用を抑えたい場合にはそうした事務所を選びましょう。
インターネット上での誹謗中傷は弁護士に依頼すべき?費用相場はいくらくらい?
インターネットで誹謗中傷を受けた際、法的に対処するのは手順も多く一般の人には難しいものですが、そんなとき頼りになるのが弁護士です。この記事ではインターネットの誹謗中傷にはどんなものがあるのか、弁護士に依頼した際のメリットや費用について説明しています。弁護士に頼むのは敷居が高い、と感じている人はぜひご覧ください。
書き込みを削除する方法【弁護士編】
弁護士に削除申請を依頼する場合は、個人では行う事が難しい手続きを行ってもらう場面もあります。
具体的な手続きの内容を予め把握しておくと安心です。
また、単純にサイト管理者への削除依頼を代行してもらう以外の手続きには別途費用が発生します。
手続き内容と併せて費用相場もご紹介するのでここでしっかり把握しておきましょう。
なお、裁判の有無に関わらず書き込みによって権利を侵害された「証拠」を保存しておく必要があるので、スクリーンショットを撮るなどして証拠の保存を徹底しておいてください。
削除申請をする(裁判外)
裁判を行わない場合の削除申請代行で一番手続きが簡易的なのは、専用フォームやメールによる削除申請です。
これらの手続きは個人でも対応可能であるため、専用フォームやメールで解決が期待出来ない問題を弁護士に依頼するのが一般的と言えるでしょう。
もちろん手続きに不安がある場合や多忙で時間が確保出来ないといった場合であれば、こうした手続きの代行を依頼するのもひとつの手段です。
特定の書き込みによって個人や企業が権利を侵害されているという事が明らかな場合には、弁護士は「送信防止措置依頼書」という書面を用いてサイト管理者に該当書き込みの削除を依頼します。
この手続きはプロバイダ責任制限法という法律のガイドラインに則ったものであり、この書面を受け取ったサイト管理者は比較的削除に応じやすくなります。
ただし法律的な強制力は無く、加害者を特定する事までは難しいという点には留意しておきましょう。
誹謗中傷された明確な証拠をサイト管理者に提示して対応してもらう事が出来れば、この時点で問題は解決します。
送信防止措置をとる場合には着手金として約5万円~10万円、成功報酬として約5万円~10万円の弁護士費用が必要になる場合が多いです。
事務所によっては成功報酬を取らないケースもあるので、相談時に確認しておきましょう。
上記のプロバイダ制限法は「送信防止措置請求」とサイト管理者に対する「発信者情報開示請求」ができる権利を認めています。
発信者情報開示請求は書き込みを行った張本人に関する情報をサイト管理者に開示させるための手続きです。
プロバイダ制限法では回線とインターネットを接続するプロバイダの責任を軽減した上で、インターネット上で誹謗中傷を受けた被害者の保護を目的としています。
削除申請をする(裁判所の仮処分)
専用フォームやメール・送信防止措置依頼書による削除申請でサイト管理者が応じない場合には、弁護士は裁判所に対して仮処分の申し立てを行い裁判所からサイト管理者へ削除命令を下してもらう事になります。
仮処分の申し立ては手間とコストを必要としますが、ある程度法的な強制力をもった手続きになるのでサイト管理者は書き込みの削除に応じるケースが多いです。
ネットの掲示板とは言え、誹謗中傷の書き込みは法律上の不法行為に該当します。
そのため、不法行為が認められた地域を管轄する裁判所への申し立てが必要です。
この場合、被害者・加害者どちらの住所を管轄する裁判所でも問題ありません。
裁判所に仮処分を申し立てるためにはまず必要書類を提出し、受理されれば債権者面談になります。
続いて被害者・加害者が共に言い分を述べる双方審尋を行った後、裁判所から指定された供託金(担保金)を差し入れて決定製本が交付されるというのが一般的な流れです。
仮処分の申し立ては弁護士の負担も大きいので着手金は約20万円、成功報酬は約15万円と相場もある程度高額になっています。
事務所によっては成功報酬を取らない代わりに着手金を高めに設定している場合もあるので覚えておきましょう。
(例:着手金30万円、成功報酬無し)
犯人を特定する方法【弁護士編】
ネット上で誹謗中傷の被害に遭った場合、加害者を特定する必要性が出てくる事も多いです。
特に裁判までもつれるケースでは損害賠償の請求や名誉棄損による刑事告訴を視野に入れる事になります。
これらは加害者が特定出来て初めて行う事が可能になるのです。
加害者の特定には「対サイト管理者」「対プロバイダ」という2つのステップを踏む必要があります。
ここでそれぞれの手続きについて詳しく把握しておきましょう。
サイト管理者への請求
書き込みが行われたサイトの管理者は、加害者の個人情報を直接保持している訳ではありません。
ただし加害者のIPアドレスや投稿のタイムスタンプなど、加害者の特定に必要となる情報を持っているのです。
そのため、まずはプロバイダ責任制限法のガイドラインに則ってサイト管理者に対してIPアドレスなどの開示請求を行います。
開示請求を受けたサイト管理者は該当の書き込みを行った発信者に対して情報開示の可否を問い合わせますが、通常この時点で情報が開示される事は稀です。
なお、発信者の連絡先が不明な場合はこの確認作業は省略されます。
一般的には裁判所へ仮処分の申し立てを行い、手続きに法的な強制力が付加された段階で情報が開示されると思っておくのが良いでしょう。
インターネットサービスプロバイダ(ISP)への請求
サイト管理者から加害者のIPアドレスなどが開示されたら、その情報を基にして加害者が利用していたインターネットサービスプロバイダ(ISP)を特定します。
プロバイダに対する情報開示請求は確実性を重視して訴訟提起するのが一般的です。
プロバイダの特定にはIPアドレスからドメイン所有者を割り出せるwhois検索を利用します。
発信者情報開示請求はここで判明したプロバイダに対して行うのです。
プロバイダがサイトのアクセスログを保存している期間は3~6ヶ月と言われています。
そのため、アクセスログが失われてしまわないようにまずはアクセスログ保存要請を行うのが基本です。
書面にて任意で応じてもらえるケースもありますが、場合によってはこの段階から仮処分の申し立てを行う必要があります。
アクセスログを確保出来たら改めて発信者情報の開示請求を行いますが、一般的にプロバイダは個人情報の開示に慎重なので裁判で争う事になるケースが多いです。
稀に裁判に発展せずに開示される事もあります。
プロバイダに対する発信者情報開示請求を弁護士に依頼するには、着手金が約20万円~30万円、成功報酬が約15万円~20万円という相場になっています。
ただしこれらは訴訟手続きのみを依頼した場合の金額です。
依頼内容によってはさらに費用が必要になる事もあるので注意しましょう。
損害賠償請求ができることも!
手続きの中で加害者を特定出来たら、損害賠償を請求する事も視野に入るでしょう。
損害賠償請求は原則的に加害者との示談で行われますが、加害者が交渉に応じない場合には裁判で争います。
示談交渉における弁護士費用相場は着手金が約10万円、成功報酬は回収した損害賠償の約16%です。
訴訟を起こす場合には着手金約20万円、成功報酬は同じく回収した損害賠償の約16%が相場となっています。
なお、名誉毀損による損害賠償は一般的に10万~50万円程度と言われているので留意しておきましょう。
プロの弁護士に依頼して掲示板削除依頼をスムーズに進めよう!
ネット上の誹謗中傷問題を根本的に解決するためには、該当の書き込みを削除する手続きを行う必要があります。
個人で手続きを進める事も可能ですが、必要となる行程や法律的な知識は少なくありません。
効率的かつ確実に問題を解決するためには、法律や交渉の専門家である弁護士に依頼するのがおすすめです。
まずは法律事務所の無料相談などを利用してみると良いでしょう。
今回の記事を問題解決の参考にしてみてください。
誹謗中傷を受けた場合の対処方法と損害賠償を考える
インターネット上でよくあるトラブルの1つに、誹謗中傷を受けたというケースがあげられます。もしも誹謗中傷を受けた場合には、削除依頼を出すなどの対処も大切です。また実害を受けた場合には、損害賠償も含めて検討するようにしましょう。