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ネットで誹謗中傷を書かれた!誹謗中傷をした個人の情報開示は可能?

2020年10月20日 公開 更新

監修:第二東京弁護士会所属(第54484号)
中崎 徹人

インターネット上で、知らない人に悪口を書かれたことはありませんか。
もしも、誹謗中傷されたことが原因で困っているなら、書き込んだ人を突き止めることも可能です。
しかし、書き込まれた情報を基に、発信者を特定するには条件や制約があります。
本記事では、発信者の情報を開示請求するやり方と注意点を紹介していきます。

発信者情報開示請求とは

発信者情報開示請求とは
発信者開示請求は、インターネット上で誹謗中傷されたときに知っておきたい制度です。
インターネットは便利な反面、時として人を傷つける道具にもなります。
自分が抱えるストレスのはけ口を求めて、相手を傷つける内容をわざと書き込む人たちがいるのです。
しかし、インターネット上に一度書き込まれた情報は、嘘か本当か分からないことでも拡散してしまいます。

まったく身に覚えがなくても、私生活に支障が出てしまうこともあるでしょう。
損害を受けた分の賠償をしてもらいたいときは、誹謗中傷をした相手の情報を知る必要があります。
このとき被害者がプロバイダに対し、相手の情報を開示するように請求することを、発信者情報開示請求と呼ぶのです。
請求が認められれば、書き込んだ相手の氏名や住所、電話番号、それからSIMカードの識別番号の情報を知ることができます。

プロバイダ責任制限法とは

インターネット上で誹謗中傷されたときに知っておきたいのは、プロバイダに賠償責任を問うことができないケースもあるということです。
プロバイダを使っている人はたくさんいるため、プロバイダが全ての賠償請求に応じることは難しいといえます。
そのため、条件を満たすときはプロバイダ責任制限法により、賠償責任について免責されることが決まっているのです。
名誉棄損や著作権侵害、プライバシーの侵害についての賠償責任が免責されます。
プロバイダ責任制限法の対象となるのは、特定電気通信にあたるWebページ及び掲示板、インターネット動画や生配信などです。

プロバイダは、違法な投稿があると知ったときに適切な対応をすれば、責任を問われることはありません。
しかし、プロバイダが違法な投稿を知りつつも対処しない場合は、被害者がプロバイダを訴えることもできるのです。
プロバイダ責任制限法があることで、利用者は何かあったときに投稿の削除依頼や開示請求ができます。
加害者が表現の自由だから何を書いても良いとごねたとしても、条件に当てはまる投稿は削除や情報開示の対象となるのです。

発信者情報開示請求に該当する条件

インターネット上に誹謗中傷の書き込みがあり、相手を突き止めたい場合に発信者情報開示請求ができます。
しかし、発信者情報開示請求をするには、下記の条件を満たす必要があるため注意しましょう。
ここからは、被害者が加害者の情報を開示請求できる条件について紹介していきます。

権利侵害が行われたことが明らかである

加害者から権利侵害を受けたとき、被害者は発信者の情報を開示するように求めることができます。
インターネット上で行われる権利侵害として考えられるのは、プライバシーの侵害や名誉棄損、著作権侵害などです。
加害者が法律違反している証拠を示すことができれば、情報開示の条件を満たすことができます。
そのため、自分に不利益となるような悪質な書き込みをインターネット上で見かけた場合は、画面や動画を保存することが大切です。
また、どのようなことが書き込まれ、どのような被害を受けたのかを詳しくメモしておく必要があります。
証拠を残しておくことで、発信者情報開示請求がしやすくなります。

開示請求を行うための正当な理由がある

プロバイダに発信者の情報を開示してもらうには、正当な理由がなくてはいけません。
プロバイダも対処するために、それ相応の理由を求めています。
正当な理由もなしに個人情報を開示していては、犯罪に繋がってしまう恐れがあるからです。
そのため、法律に違反する理由では、個人情報を開示してくれません。
復讐目的の開示請求はもってのほかで、正当性のある理由として認められないのです。
該当の投稿の削除をしたい、あるいは法的措置を取りたいというような法律にのっとった理由が必要です。
法的措置としては、民事請求の損害賠償請求や刑事告発があります。

開示請求を行う流れ

開示請求を行う流れ
誹謗中傷を書き込んだ相手の情報を開示してもらうためには、権利侵害に当たっていて、かつ正当な理由がなければいけません。
もし、開示請求を行う条件を満たしているときは、下記の通りに手続きを行いましょう。

開示が認められる要件を満たしているか検討

発信者の情報を求めるには、開示が認められるだけの要件を満たしている必要があります。
そのため、開示請求を行う前に、要求が通る案件なのか冷静になって考えましょう。
書き込みによって名誉が傷つけられたときは、名誉棄損で訴えるために開示請求ができます。
また、著作物を無断でインターネット上に載せられたなら、著作権侵害で情報を求めることが可能でしょう。
もし、公開されたくない情報をインターネット上で拡散されてしまったら、プライバシーの侵害に当たる案件として情報開示を求めることができます。
インターネット上の誹謗中傷といっても色々なケースが考えられるので、自分がどのケースに当てはまるのか情報を整理してみましょう。

ただし、名誉棄損で情報を求めるなら、書き込みによって名誉が傷つけられたり、社会的な地位が下がったりすることを明らかにする必要があります。
プライバシーの侵害で情報を求める場合も同じく、これまでインターネット上にあげてない事実がさらされたことを証明しなくてはいけないのです。
発信者の情報を求めるにはいろいろと証拠集めが大変ですが、できる限り早めに開示請求を行ってください。
なぜなら、プロバイダの記録は自動削除されるようになっているため、3カ月程度で情報がなくなってしまう可能性があるからです。
そのため、発信者の情報を特定したくても、書き込まれた日から時間が経ち過ぎているときは、情報を得られないことがあるので注意しましょう。

サイト管理者に投稿者の情報の開示依頼

発信者の情報開示を請求するための要件を満たすことが分かったら、サイト管理者に情報の開示依頼をすることになります。
まず、サイト管理者に対し、発信者情報開示請求書を送りましょう。
発信者情報開示請求書は、プロバイダ責任制限法ガイドライン等検討協議会が、発行しているガイドラインから手に入れることができます。
または、発信者を訴えることを考えているなら、弁護士に依頼すると請求書も任せられるので安心です。
情報開示の請求書には、掲載された情報と侵害された権利、権利が明らかに侵害されたとする理由の3つを書き込みます。

サイト管理者に請求できるのは、IPアドレスとタイムスタンプです。
IPアドレスは、インターネットを使うときに割り振られる固有のアドレスなので、相手を特定するうえで役立ちます。
そして、タイムスタンプは、問題の書き込みがされた年月日と時刻を知るために要求します。
ただし、発信者情報開示請求書を送っても、サイト管理者が応じてくれないことがあるでしょう。
その場合は、サイト管理者に対し、発信者情報開示仮処分命令申立を起こす必要があります。

裁判所へ記録消去の禁止命令の依頼

サイト管理者から得た情報でプロバイダが分かったら、プロバイダが記録を消さないように手続きをする必要があります。
プロバイダの情報は定期的に自動で消えていくので、手続きを行わないと、発信者の情報が消えてしまう可能性があるからです。
そのため、裁判所に対して、「発信者情報消去禁止仮処分命令申立」を行います。
スムーズに進めば手続きから2週間くらいで、裁判所のほうからプロバイダに情報を消さないよう命令が出されます。
プロバイダに発信者情報の情報を開示してもらうには、民事訴訟を起こさなくてはいけません。
そのため、情報開示までに6~7カ月程度の長い時間を要します。

プロバイダに個人の情報の開示依頼

裁判所に発信者の情報を削除しないよう禁止命令を出してもらったら、プロバイダに対し発信者情報開示請求のための訴訟を起こしましょう。
裁判所が名誉棄損やプライバシーの侵害といった人権侵害に当たると判断すると、いよいよ発信者の情報が開示されます。
このとき情報開示のために、サイト管理者から得たIPアドレスとタイムスタンプの情報が用いられます。

開示請求ができないケース

開示請求ができないケース
訴訟を起こしても、発信者の情報が得られないケースもあります。
それはIPアドレスが消えていたり、発信者が海外のサーバー経由でアクセスしていたりする場合です。
ネットカフェのような不特定多数のアクセスがある場所も、発信者の特定をするのは難しいでしょう。
ここでは、どのようなケースが情報開示できないのか紹介していきます。

IPアドレスのログが削除されている

プロバイダは情報開示請求されると、IPアドレスを基に発信者を突き止めます。
ただし、IPアドレスのログが消えてしまうケースもあり、記録がないときはプロバイダに情報開示ができないと断られます。
発信者が何の端末を使って書き込んでいるかにもよりますが、携帯で書き込んでいる場合は3カ月くらいの期間で情報が消えます。
サイトの管理者がもっと早い期間で記録を削除していたり、IPアドレスのログ自体とっていなかったりすることもあるでしょう。

さらにいえば、サーバー運営会社がIPアドレスの記録を保管していないケースもあります。
サーバー運営会社は、IPアドレスの記録を保管しておく義務がありません。
つまり、IPアドレスの情報が欲しいと思ってプロバイダに請求しても、サーバー運営会社が保管していないことが考えられるのです。
ただし、大抵のサーバー運営会社はIPアドレスを一定の期間保管しているため、情報開示ができないことは少ないでしょう。
それよりも気をつけなくてはいけないのは、先に問題の投稿を削除してしまって、一緒にIPアドレスの記録が消えてしまうということです。
投稿の削除を依頼するよりも前に、IPアドレスを判明させておく必要があるのです。

海外プロキシサーバー経由でアクセスしている

発信者の情報を突き止められないケースとして、海外プロキシサーバーを経由してアクセスしているというケースが挙げられます。
そもそも、一般的にインターネットを使う場合は、ウェブサーバーに要求を送ってサイトを閲覧します。
しかし、違法行為をする人たちのなかには、海外のサーバーを間に挟むことで、身元がばれないようにしている人たちがいるのです。
日本の裁判所では扱うことができない案件なので、その場合海外のプロキシサーバーに対して情報開示請求をすることになります。
ただし、海外企業は情報開示請求に応じる義務がないので、泣き寝入りするしかない可能性もあります。

ネットカフェなど不特定多数が利用する機器からアクセスしている

自宅のパソコンから誹謗中傷の書き込みをしているときは、発信者の情報を特定しやすいものです。
ただし、ネットカフェのような多くの人が利用する場所から、書き込みが行われているときは個人が特定しにくいといえます。
ネットカフェに設置されているパソコンは、毎日たくさんの人が利用していて、遠方から利用しに来ている人たちもいます。
そのため、投稿した人を割出すことができないこともあるのです。

とはいうものの、利用客に対し身分証明書の提示を求めているネットカフェもあるため、発信者を特定できることもあります。
カフェのWi-Fiを使って誹謗中傷の書き込みが行われたときも、常連客であれば突き止められるケースもあるでしょう。
ただし、ネットカフェと違い、カフェは誰でも利用できる場所なので、発信者を特定するのは極めて困難です。

サイト管理者は正当な理由がある場合は情報を開示する義務がある

サイト管理者は、正当性な理由を持つ請求者に対して、持っている情報を開示しなくてはいけません。
要件を満たしている請求にもかかわらず、サイト管理者が情報開示を断るときは処罰の対象となります。
あくまでもプロバイダ責任制限法は、サイト管理者やプロバイダが適切な対応したときに賠償請求を免責される法律です。
そのため、正当性のある請求に対して対応してくれないときは、同法の4条4項にのっとってサイト管理者に賠償責任が発生します。

開示請求にかかる期間

開示請求にかかる期間
発信者の情報開示請求にかかる期間は、サイトによってまちまちです。
通常は、サイトにIPアドレスやスタンプの情報を開示するよう求めると、裁判所を通すので1~2カ月程度の期間待つ必要があります。
プロバイダに情報を開示するよう請求する際は、3~4カ月程度かかるとみておくべきでしょう。
さらに、判決が出るまでとなると、半年くらいはかかる心づもりをしたほうがよいかもしれません。

弁護士に依頼した場合の費用相場

弁護士に依頼した場合の費用相場
インターネット上に書き込まれた誹謗中傷をどうにかしたいと、弁護士に相談するときの費用の相場は下記の通りです。
あくまでも目安の金額なので、着手金と報酬金は事務所により異なります。
依頼前によく確認しておきましょう。

・サイトに対し発信者情報開示請求をする場合

着手金20万円~
報酬金15万円~

・プロバイダに対し発信者情報開示請求をする場合

着手金20~30万円~
報酬金15~20万円~

誹謗中傷を受けたら投稿者の特定は可能

誹謗中傷を受けたら投稿者の特定は可能
誹謗中傷を受けたときは、名誉棄損やプライバシーの侵害などの条件を満たしているなら、書き込んだ相手を突き止めることができます。
しかし、投稿から時間が経過し過ぎていたり、不特定多数の人たちが集まるカフェなどのWi-Fiで投稿されたりすると、特定するのは困難だといえるでしょう。
そのため、できるだけ早い対処が求められます。

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