SNSやスマートフォンの普及によって、誰でも簡単にインターネット上に情報を発信できるようになりました。
便利な世の中になるとともに必ずいろいろな問題が発生してしまうものです。
その中で一番問題視されているのが、掲示板による特定の個人・法人に対する誹謗中傷です。
今回は、インターネットの誹謗中傷について解説していきます。
ネット誹謗中傷が書かれるサイト
インターネット上で誹謗中傷が書かれるサイトは多岐にわたります。
その中でも特に誹謗中傷が書き込まれやすく、なおかつ閲覧者数も多いため影響力を持つと考えられるいくつかのサイトの種類をご紹介します。
5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)
日本でも閲覧者数や利用者数が一番多いと言われる掲示板です。
日本語から派生した独自のコミュニケーション方法や会話の作法なども散見され、そのなかの一部として誹謗中傷の条件を満たすような投稿もおこなわれます。
投稿をしているユーザーは匿名で、投稿する内容へのレギュレーションも厳密でないため、どのような内容が書かれても成立するコミュニティとなっています。
匿名性であることからひとつの誹謗中傷に対して便乗して次々と対象を貶める言葉が投げかけられる傾向があります。
また、閲覧者数が多く、かつ不特定多数のユーザーによる大量の書き込みが1ページに発生するため、検索上位に表示されることが多くなるのも特徴です。
Twitter、mixiなどのSNS
SNS(ソーシャルネットワーキング)を通じて誹謗中傷が書かれることもあります。
Twitterやmixiは登録した会員内かつフォローという概念で紐づいたユーザー同士が表示できる場所で発言されますが、その発言がリツイート(ほかのユーザーによる引用)などの形で拡散される場合も多く、結果として多くのユーザーの目に飛び込む情報になるのです。
特徴として、短い文章や一文のみの引用などで情報が広がっていくため、元は誹謗中傷でなかったものが誹謗中傷に改変されていくことや、本来クローズドだった情報が開示されることで誹謗中傷の条件に当てはまるものになるケースなどがあります。
各ジャンル/業界の口コミサイト
化粧品や占いなど、ジャンルによってそのサービスに対する口コミを書き込むためのサイトがあります。
こうした場所は、本来そのサービスに対してお互いのレビューを通じて平均的な評価を検討することが目的のはずですが、何らかの目的で悪評を多数投稿することで、その商品やサービスの評価を下げようとする書き込みが多く見られます。
また、ECサイトにおけるレビューもこれに近い形の投稿が多くあり、本来のサービスや商品と無関係な悪評などを連ねるコメントも珍しくありません。
こうした投稿は、内容によってはその商品のイメージダウンと購入者数の減少を大きくしてしまう可能性があり、意識的な誹謗中傷である場合は早急な対応が必要となります。
読者を集めることを目的とした個人ブログ
検索上位に表示されることで読者数を増やし、広告収入を得ようとしている個人ブログでは、対象を貶める内容を継続的に掲載していることがあります。
こうしたブログは検索ワードによって上位に検索されることでしか発見できませんが、一方で検索しても出てこない程度の発言力のブログは大した影響はないので構わなくて良いでしょう。
内容はジャンルによってそれぞれですが、傾向として検索上位に表示されることを意識したワードをちりばめている誹謗中傷であることがほとんどです。
したがって、社名やサービス名、悪評のポイントとなる固有名詞などを盛り込んだ記事であることが特徴となります。
二次的ニュースを扱うメディア
近年はリソースとなるニュースを引用した上で、別の解釈をつけて掲載する二次的なニュースを大量生産しているメディアも存在します。
こうしたメディアは根拠となる情報の追求をせず、なおかつ複数のニュースを引用して独自の解釈を加えるため、改変のプロセスで誹謗中傷になり得る危険性の高いメディアと言えます。
ネット誹謗中傷が書き込まれるデメリット
では実際に、誹謗中傷が書き込まれることによるデメリットはいったいどんなものがあるでしょうか?
いくつかのケースを想定してご紹介いたします。
第三者は誹謗中傷を事実として受け止めてしまう
インターネット上の誹謗中傷でもっとも気をつけたいことは、その情報が真実なのか否かを読者側は判断できないということです。
インターネット上ではさまざまな情報が流布しており、それらの真偽について確認することもなく閲覧者はその情報を享受することが習慣になっています。
したがって、どのような形であれ発信された情報は、第三者にとっては事実として受け取られてしまう可能性が高いということです。
さらに、誹謗中傷を事実として受け取った第三者が、その第三者のなかで情報に対するイメージや評価を完結させるだけでなく、その評価をまた別の誰かに共有することも珍しくありません。
たとえば、「A社は最悪だ、対応も悪く品質もひどい」という誹謗中傷があったとして、それを事実と受け止めたBという第三者が「A社は最悪らしい」という印象を自分のSNSなどを通じてさらにBの友人などにシェアする可能性があるということです。
こうした拡散力も含め、事実と受け止める第三者は制限なく増幅していくことになります。
もはや多数が事実と認識してしまえば、たとえ事実ではなかったとしても、弁明したところで効力を発揮しなくなるでしょう。
インターネットで誹謗中傷が書き込まれることの最大のデメリットは、事実あるいはポジティブな印象の無効力化なのです。
企業にとって、その損害がいかに大きいかは言うまでもないでしょう。
企業の場合はイメージを低下させる
企業の場合、こうした誹謗中傷による影響がそのまま経営に直結します。
たとえば、売上への影響は誹謗中傷や風評によって如実に現れるポイントです。
特定のサービスや商品名に紐づいて誹謗中傷がおこなわれた場合、その商品を新規に購入する顧客は激減するでしょう。
また、今までリピートしていた顧客を失うことにもつながります。
商品が店舗に置かれるタイプのものである場合は、「異物が混入している」などの情報が拡散された場合、全ての店舗から商品を撤収するなどの対応が必要になることもあります。
単なる売上の低下だけでなく、こうした副次的な対応による損害も含めると、甚大なダメージを受けることになるでしょう。
さらに、売上だけでなく、誹謗中傷の影響は採用に対しても鑑みなければなりません。
優秀な人材であればあるほど、就職を希望する企業に対して綿密なリサーチをしてくるものです。
そんな彼らにとって、企業やサービスに関する悪評や疑惑は応募意志をそぐものとなります。
企業にとってクリーンなイメージを保つことは、売上、採用、その他さまざまな観点から見て必要なことです。
現代ではインターネットという情報の集合体があることから、ひとつの誹謗中傷でクリーンなイメージを壊されてしまう可能性があるため、注意が必要なのです。
個人の場合
個人に対する誹謗中傷の場合、もっとも大きな影響は精神的ストレスでしょう。
もちろん、自分自身を根拠なく否定されることはそれだけでもストレスにつながりますし、それが影響で周囲からの評価が下がってしまうことや、誤解を受けてしまうことは、耐えがたい苦痛を与えるでしょう。
こうした精神的苦痛の蓄積により、うつ病を発症してしまう人や、誹謗中傷の内容に関わる事項に対してトラウマを抱える人もいます。
また、出会い系サイトに個人情報を流布されたなどのケースの場合、求めていないメールや連絡がひっきりなしに来るなど、精神面以外の悪質な嫌がらせにつながります。
プライベートだけにとどめられない場合もあります。
たとえば、誹謗中傷によってインターネット上などで公開されたあなたに関わる情報が職場の人に見られてしまった場合、仕事の内容にも影響が出る可能性があります。
誹謗中傷などのインターネット被害に対して理解のある職場ならば誤解をとけるかもしれませんが、真実と捉えた場合はあなたの評価が著しく下がる可能性があります。
また、企業に勤めているのではなくフリーランスなどで活動している場合は、誹謗中傷が原因で仕事がなくなり、生活が維持できないケースも出てくるのです。
インターネットにおける誹謗中傷の対処法
こうしたインターネット上の誹謗中傷の被害にあってしまった場合、どのように対応すれば良いのでしょうか?
相談する相手と対処してくれる内容についてご紹介します。
弁護士に依頼
インターネット上の誹謗中傷についてもっとも相談に適している相手は、ネット上の問題に詳しい弁護士です。
弁護士は、誹謗中傷に関して権利侵害と判断した場合、法律に基づいた適切な対策を代行してくれます。
弁護士ができること
弁護士は、インターネットにおける誹謗中傷に関して下記の対応ができます。
1)被害の内容が法律に基づいた権利侵害と認められる案件なのかを判断
精神的なダメージを受けるものや企業が損害を被る内容でも、その内容が法律で定められている一定の条件を満たさない場合、そもそも弁護士は対応することができません。
あなたが困っている内容を弁護士に相談することで、それが法的処置をとれるものなのかどうかを判断することができます。
2)投稿を削除
上記の判断で権利侵害とみなされた場合、所定の投稿を削除するための申請や手続きを弁護士が代理して進めてくれます。
基本的には投稿を削除する申請などは被害にあった本人がおこなうもので、第三者が営利目的で代行することは法律上認められていませんが、弁護士のみがこの対応をおこなうことができます。
3)投稿者の特定
誹謗中傷の多くは、投稿者が誰なのかわからない状態で発信されています。誹謗中傷に対しての損害賠償などを請求する場合は、弁護士が投稿者の特定業務も代行してくれます。
このプロセスでは、サイト管理者やプロバイダとの交渉が発生するため、個人での対応ができない対処も弁護士によって可能になるところが特徴です。
4)損害賠償の請求
特定した投稿者に対して慰謝料を請求する際にも、弁護士が交渉代理として立ってくれます。
書面または対面での交渉が必要で、自分自身でおこなうことも可能です。
ただ、できる限り事態を穏便に解決したい、慰謝料の請求によって案件を落ち着かせたいという思いのある方は弁護士への代理交渉を求めるケースが多いようです。
誹謗中傷と認められるケース・認められないケース
誹謗中傷が権利侵害と認められるケースは「名誉棄損」、「侮辱」、「プライバシーの侵害」の3項目に当てはまるということが認められた場合のみです。
○名誉棄損…公然の場で事実を示して第三者の評判を落とす行為
○侮辱…公然の場で第三者の評判を落とす、真偽の確かめられない行為
○プライバシーの侵害…本人が公開を望まない個人情報や私生活のことを公に公開すること
したがって、上記の3項目に当てはまらない場合は誹謗中傷と認められないこともあるので注意が必要です。
たとえば、どの場合も公の場での発信であることが前提となるため、クローズドなコミュニティ(閲覧者が極めて制限されたSNS)などでおこなわれた発言に対して、誹謗中傷であると訴えることは難しいでしょう。また、名誉棄損の場合は公益性が認められ、かつそれが真実だった場合は名誉棄損に当てはまらないなどの特殊パターンもあります。
弁護士以外の方法で解決する
弁護士以外にもインターネットにおける誹謗中傷について相談する窓口はありますが、相談する際にはそれぞれ注意が必要です。
誹謗中傷対策会社に発注する場合
インターネットにおける誹謗中傷に対して、検索に表示されづらくするなどの対策方法をとってくれる誹謗中傷対策会社もあります。
しかし、こうした誹謗中傷対策会社は法的な措置として対策してくれるのではなく、あくまで技術的な対応しかとってくれないことを念頭に置きましょう。
したがって、投稿そのものの削除や投稿したユーザーの特定などはできません。
投稿そのものの削除について代行するという誹謗中傷対策会社は、「非弁行為」という法律違反を犯していることになります。
「非弁行為」とは、弁護士以外の立場の人が営利目的で弁護士の業務を行使することを指します。
警察に相談する場合
警察は事件性のあるインターネット上の誹謗中傷の相談相手としては有効です。
殺人事件などにつながるような殺人予告などが当てはまります。
一方で、いわゆる事件性のない誹謗中傷(精神的ダメージがある、企業評価が落ちるなど)の解決については、警察の役割ではありませんので積極的な対応は望まないほうが良いでしょう。
法務局に相談する場合
法務局は個人での解決を援助してくれる対象と考えましょう。
その投稿の削除依頼を個人名でおこなっても対処してくれなかった場合、法務局に相談するとその先の削除依頼申請の代行をおこなってくれます。
しかし、法務局が対応してくれるのはあくまで削除依頼申請のみで、そのほかの投稿ユーザーの特定や損害賠償請求のプロセスは援助してくれません。
投稿を削除すれば問題解決だと考えている人にとっては有効な手段でしょう。
司法書士に相談する場合
司法書士は法的業務に関わる資料を作成することが業務なので、インターネット上の誹謗中傷に対しての書類を作成することも援助してくれますが、その後の交渉など諸々の弁護業務を司法書士に依頼することは不可能だということを思えば、はじめに弁護士に相談したほうが良いということがわかるでしょう。
まとめ
インターネットにおける誹謗中傷は、閲覧者数の多い人気サイトやSNS上で生まれます。それらの場で誹謗中傷を書き込まれることで自分自身や企業全体のイメージダウンにつながる情報を不特定多数の人に見られるという危険性があります。
さらに、それが原因で売上や採用に影響が出るということもあり、誹謗中傷問題は発券次第すぐに保管することが良いでしょう。