掲示板、ブログ、SNSなどユーザーが何気なく投稿できるプラットフォームが増えている現在、同時にネット上での誹謗中傷案件も増えてきています。
ネットの誹謗中傷案件は名誉毀損が成立しやすいことでも知られており、その数は警察に相談されているだけでも毎年1万件程度。社会的にネット上の誹謗中傷への感度が上がってきている事実がうかがえます。
誰でも被害者・加害者になってしまうリスクがあるということです。
こちらでは、ネット誹謗中傷によって名誉毀損で訴える方法と訴えられた時の対処法まとめを紹介します。
目次
ネット誹謗中傷で名誉毀損が成立する要件は?
単に「ネット上の発言で嫌な思いをした」というだけでは訴えられるとは限りません。
名誉毀損が成立するための要件があります。まずは、名誉毀損の定義や、要件を覚えておきましょう。
名誉毀損は権利侵害のうちの一種
まずは、名誉毀損の意味について深堀りしていきましょう。
名誉毀損とは名誉権の法的な侵害行為です。
特定対象の評価を落とすような誹謗中傷発言は、名誉毀損に当てはまる場合があります。
名誉毀損は法的権利侵害の一種です。
ほかの権利侵害として「侮辱罪」「プライバシーの侵害」が挙げられます。
名誉毀損が成立するための3つの要件
単なる誹謗中傷では、名誉毀損には分類できません。
上述したほかの権利侵害と区別する意味も込めて、名誉毀損には以下の3つの要件が設けられています。
1.公然の場であること
要件のひとつは「公然の場」であることです。
これは、「複数人に情報が伝わる環境」を意味します。
オフィス内や教室内など複数人に見られてしまう・聞かれてしまう環境は代表的な「公然の場」です。
インターネット上においても、不特定多数ノーユーザーが投稿・閲覧を行うオープンな掲示板は、「公然の場」として見なされます。
反対に、1対1の状況で受けた罵倒などは「公然の場」でのものではないため、名誉毀損には当てはまりません。
2.真偽を確かめることができる内容
ふたつ目の要件は、「真偽を確かめることができる内容」であることです。
例として、ある人物に関する「離婚歴がある」「逮捕歴がある」といった情報は、真偽を確かめることができます。
一方、「AはBが嫌いだ」「Aは〇〇な思想を持っている」といった情報は主観性に依存しており真偽の確かめが困難なため、名誉毀損からは除外されます。
また、この要件で重要なのは「真偽を確かめられること」であり、真偽そのものは問われません。
上述した例では、名誉毀損は実際の離婚歴、逮捕歴に関係なく判断されます。
3.社会的評価を下げる言動
公表されること(真偽にかかわらず)で社会的評価が下がり、不利益を被るおそれがある言動であることも、名誉毀損の要件のひとつです。
名誉毀損が成立しない時もある?
上述した要件に当てはまっていながら、名誉毀損が成立しないイレギュラーケースもあります。
それが、「公共性」「公益性」「真実性」の条件を満たしている場合です。
「公共性」は社会全体、または特定コミュニティの利害に関係していることを意味します。
「公益性」は、「発言の目的がまっとうな公共の利益を増進させることである」という意味です。
「真実性」とは、その発言が真実であることを意味します。
例として、社員によって内部告発された企業の不祥事などは名誉棄損に該当しません。
誹謗中傷で名誉毀損を受けた人がとるべき行動とは?
ネット上で「これは名誉毀損では……?」と思うような投稿の対象になってしまったら、何をすべきなのでしょうか?
そのまま放置しておくだけでは、一方的に風業被害を受けてしまいかねません。
名誉毀損を受けた人がとるべき一般的な行動をご紹介します。
証拠を保存する
誹謗中傷による名誉毀損を受けた事実は、証拠とともに記録しておく必要があります。
ネットにおける誹謗中傷では、投稿された画面が何よりの証拠になります。
記録方法としては、写真やスクリーンショットが一般的です。
写真で証拠を残す場合は、誹謗中傷の本部や日付・日時、ハンドルネームなど可能な限り多くの情報を鮮明に残しておくようにしましょう。
パソコンやスマートフォンのスクリーンショット機能を利用すれば、表示されている情報をそのまま残すことができます。
管理者へ削除依頼をする
投稿された誹謗中傷がネット上に残されている限り、風評被害が広がってしまう可能性があります。
対応はサイトによって異なりますが、まずは削除の依頼をしてみるのが基本です。
窓口は運営サイトによってさまざまですが、多くの場合は問合せフォームなどが設けられていますので、こちらを利用して該当投稿の削除依頼をしてみてください。
問合せフォームが見当たらないサイトの場合、「プロバイダ責任制限法ガイドライン等検討協議会」が提供している送信防止措置書類をダウンロードし、情報を記入したうえでサイト運営者に郵送しましょう。
サイト運営者に届く住所がわからない場合は、ドメイン調査で調べることができます。
ただし、「2ちゃんねる」「爆サイ」「ホスラブ」といった大型掲示板には日常的に多くの削除依頼が寄せられているため、運営に対応してもらえるとは限りません。
さらに、送信防止措置書類の記入やドメイン調査も少し煩雑な作業です。
確実に削除依頼を運営に届けたい場合や手間をかけたくない場合は、弁護士に相談するのがおすすめです。
関連記事:ネット誹謗中傷はどこに相談する?弁護士・警察・法務局・業者の違いを徹底解説!
脅迫など事件性の高いものは警察に相談する
誹謗中傷の投稿に「殺してやる」など脅迫ともとれる文言が含まれている場合は、速やかに警察に相談しましょう。
警察は、事件性が認められない案件を報告しても行動してくれません。
しかし、明らかな脅迫が行われている場合、ネットの誹謗中傷でもなんらかの対応をしてくれるはずです。
事件性が強ければ強いほど警察も積極的になり、犯人の速やかな逮捕が期待できます。
犯人を特定する
誹謗中傷の投稿が削除されたとしても、次の誹謗中傷が投稿されないとは限りません。
また、情報拡散の度合いなど被害の大きさによっては、投稿者に謝罪を要求したいと思うのも当たりまえの心情です。
ネット上の誹謗中傷から、刑事告訴や民事的な賠償につながった例もあります。
どのような対処をするとしても、まずは誹謗中傷を投稿した犯人を特定する必要があります。
インターネットという特性上、投稿には犯人特定につながるヒントが残されていますが、情報が開示されるかどうかはプロバイダ、もしくはサイトの管理者しだいです。
個人からの情報開示申依頼に、プロバイダ・サイト管理者が応じるかどうかはわかりません。
情報開示依頼が受理されない場合、弁護士に申請を代行してもらうのがおすすめです。
弁護士からの正式な依頼であれば、プロバイダ・サイト管理者に優先して対応してもらいやすくなります。
ただし、インターネットの誹謗中傷案件に関しては弁護士によって精通度が違います。
スムーズな解決を望むのであれば、ITに詳しい弁護士を見つけるのが重要です。
関連記事:ネット上での誹謗中傷被害で犯人を特定する方法徹底解説
ネットの誹謗中傷で名誉毀損を受けた場合はどうやって訴える?
名誉毀損を受けた事件の解決を望む場合、民事訴訟と刑事告訴という二通りの方法があります。
それぞれの方法についてポイントをご紹介しましょう。
ネットでの名誉毀損罪で刑事告訴するには?
ネットでの誹謗中傷を名誉毀損罪で刑事告訴するためには、警察に告訴状を提出するのが一般的です。
被害届でも名誉毀損の事実を報告できますが、捜査義務が発生しません。
証拠ともに告訴状を提出するほうが確実です。
捜査のあと、必要性を認められれば警察によって投稿者が逮捕されます。
最長で23日間の勾留ののち、起訴が行われるかどうかは検察官の判断しだいです。
刑事裁判では、名誉毀損の内容に応じて執行猶予の有無、罪状が決められます。
刑事裁判では、投稿者に慰謝料を求めることはできません。
示談金による金銭的解決は可能です。
投稿者としても罪状を軽くしたいと考えるのが一般的なため、投稿者から示談金交渉をしてくるケースがあります。
名誉毀損での民事訴訟はどうすればいい?
民事訴訟を行う場合は、誹謗中傷の被害者自らが訴状を裁判所に提出します。
裁判が始まる前の段階で投稿者に直接内容証明を送り、慰謝料をすることが可能です。
この段階で支払いがあれば、裁判の必要はありません。
投稿者が請求に応じない場合は、裁判ののち裁判所を介して請求することができます。
個人での直接交渉や裁判所とのやり取りは難しいため、弁護士に依頼するのが一般的です。
また、民事訴訟の手続きでは全体を通して警察の介入はありません。
関連記事:インターネットの誹謗中傷を弁護士に相談するメリット
自分が加害者に?名誉毀損で訴えられたらどうする?
インターネットが普及し、誰でも自分の主張ができるようになった現在、自分が名誉毀損の加害者になってしまうケースも十分考えられます。
悪意の有無にかかわらず、相手から訴えられてしまうこともあるでしょう。
名誉毀損で訴えられた場合、どうすればよいのでしょうか?
名誉毀損の加害者になってしまった場合の対処を具体的にご紹介します。
名誉毀損の加害者になってしまうケース
名誉毀損に該当するケースについては上述したとおりです。
通常、一般的なモラルを有している方であれば名誉毀損の加害者になってしまうことはありませんが、インターネットの匿名性から、意図せずして“たが”が外れてしまうことも考えられます。
実際に、インターネット上では友人や知人、元恋人など身近な方への悪口が少なくありません。
一時的な不満を理由に、感情的な投稿をするユーザーも目立ちます。
ネット上の名誉毀損が事件に発展する例も多く、掲示板の誹謗中傷などでも告訴の理由となり得るという事実が知られてきています。
テキストを入力し投稿ボタンを押すのは簡単ですが、その前に名誉毀損の加害者になってしまうリスクについては検討しましょう。
被害者から損害賠償請求や慰謝料請求をされた場合
被害者から損害賠償請求や慰謝料請求をされた場合は、可能な限り早く示談交渉を行いお互いが納得できる方向でまとめるよう交渉しましょう。
対応の遅れは、交渉の難航や支払額の増加につながります。
最悪の場合は刑事告訴されてしまうかもしれません。
示談交渉では、「穏便な解決」に向けた話し合いを行います。
交渉しだいでは、追加の請求がなくなるかもしれません。
また、すでに告訴が行われている場合も交渉しだいでは告訴の取り下げが期待できます。
示談交渉は加害者側から呼びかけることも可能ですので、その後の人選の影響を最小限にするためにも積極的に示談交渉を行いましょう。
訴えられた時は弁護士に相談する
訴える側と同様に、名誉毀損で訴えられた側も弁護士によるサポートを依頼するのが一般的です。
訴える側とは異なり、訴える側は慰謝料や損害賠償による金銭的リターンは期待できません。
しかし、弁護士がいなければ、そもそも示談交渉にすら応じてもらえないことがあります。
相手側と同じフィールドに立ち少しでも交渉を有利に進めるため、弁護士を介して交渉に臨みましょう。
まとめ
誰でも気軽にコミュニケーションできるのがインターネットの魅力ですが、名誉毀損を受けたり、反対に名誉毀損の加害者になったりしてしまう事態は十分に考えられます。
日常的に掲示板やSNSを利用している方であれば、名誉毀損の被害者と加害者それぞれのシチュエーションにおいてどのように行動すべきなのかはあらかじめ把握しておくのがおすすめです。
どちらの立場においても、弁護士は強い味方になります。当弁護士事務所では無料相談に対応していますので、まずは連絡してみてください。