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誹謗中傷の被害を警察に捜査してもらうには?

2019年4月30日 公開 更新

監修:第二東京弁護士会所属(第54484号)
中崎 徹人

ネット上で激しい誹謗中傷を受けた場合、その対策として警察に相談するという方法があります。
しかし、いきなり警察に連絡をしても、すぐに対応してくれるとは限りません。
警察に協力をしてもらうためには、それなりの条件を満たす必要があります。
また、警察に連絡をする前に、誹謗中傷を受けたという証拠なども用意することも大事です。
今回は、誹謗中傷を受けたとき、警察に相談する際の具体的な方法、警察の対応などについて詳しく紹介します。

警察に誹謗中傷の被害を相談する前にできる対策

ネットで誹謗中傷をされたとき警察に相談をする方法を選んだ場合、相談をする前にやるべきことがあります。
それは、具体的にどのような誹謗中傷を受けたかという証拠を残すことです。
ネットは誰でも簡単に情報を発信できる反面、その情報を削除・修正することもできます。
また、ホームページの性質によっては、一定の期間を過ぎたら消去するところもあります。
誹謗中傷されたという証拠を証明するためには、ネット上の誹謗中傷が消える前に保存して、手元に残す必要があるのです。

保存方法は、ネット画面を印刷する・スクリーンショットを行い画面をファイルとして保存する、画面をデジカメなどで撮影するという方法があります。
ホームページによっては印刷コマンドを受け付けない、あるいは、画面保存できないところもあります。
それぞれの環境に合わせて保存方法を選び実践することが必要です。
保存する際の注意点は、そのページのURLと時間も記録する点が挙げられます。
具体的にどのホームページ上で誹謗中傷が起きたか、いつの出来事なのかを警察側に提示するために、URLと時間もわかるようにしっかりと保存しましょう。

また、誹謗中傷の一部だけを保存するのでなく、一連の流れがわかるように保存することも大事です。
なぜ、誹謗中傷が始まったのか、原因は何なのかということを警察に理解してもらうために、時系列に沿ってすべての誹謗中傷を保存する必要があります。
また、警察に相談をする前に削除依頼をすることによって、誹謗中傷を止められるケースもあります。

掲示板やSNSでの情報を削除することができるのは、情報を発信した本人以外に、そのサイトの管理人やプロバイダです。
それらに連絡をして削除してもらえれば、誹謗中傷がおさまるということもあります。
警察に相談をする前に、削除依頼をしてみるのもいいでしょう。
しかし、発言が削除されたことが原因で新たな誹謗中傷の書き込みを誘発させてしまうパターンもあります。
その場合は、警察に相談をしたほうがいいでしょう。
掲示板によっては、削除方法などが独自の規定になっているところもあります。
削除依頼は、サイトの規定にしたがって慎重に行うことが大事です。

誹謗中傷による被害を警察に相談できる条件

ネット上にある誹謗中傷は、警察がすべて対応してくれるとは限りません。
警察が取り扱ってくれるのは、法律に照らし合わせた際、刑法上の犯罪にあたる場合のみです。
誹謗中傷として法律上で定義されているのは、名誉棄損罪・侮辱罪・信用棄損罪・業務妨害罪などが挙げられます。
名誉毀損とは、刑事第230条第一項で「公然と事実を適示し、人の名誉を毀損した者その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役もしくは、禁錮または50万円以下の罰金に処する」と決められています。

つまり、ネットなどを閲覧できる不特定多数の人間に対し、特定の人に関する事実を提示して、その人の社会的評価を低下させることが、名誉毀損なのです。
そして、誹謗中傷の内容が嘘であった場合などは侮辱罪、個人ではなく法人が誹謗中傷を受けた場合などに適用される罪名が、信用毀損罪・業務妨害罪となっています。
また、個人・法人の情報を第三者が無許可で公の場に晒すことは、プライバシーの侵害と呼ばれ、これも誹謗中傷という扱いです。

自らが誹謗中傷を受けたと感じて警察に相談しても、誹謗中傷の定義にあてはまったものでないと警察は動いてくれません。
警察はあくまで法律に則り、法律に外れた事柄に対して動く機関です。
いくら、相談した人にとって切実な悩みであっても、日常生活で起きた個人同士のゴタゴタなどは、単なる悩み相談と判断されて警察は動いてくれません。
また「この悪口は自分のことかもしれない」と確かな証拠もないまま、警察に相談することも、やってはいけないことです。
警察は悩み相談を受け付ける機関ではないので、自分が誹謗中傷を受けている確実な証拠をそろえて、警察に提示することが必要です。

警察に誹謗中傷の相談をするときに必要なもの

ネット上の誹謗中傷に関する相談を警察にする際は「こんなひどいことをネットに書かれた」と口頭だけで説明しても、警察は聞いてくれないでしょう。
警察に相談する場合、事前にしっかりと必要なものを準備することが重要です。
まず、準備すべきものは、誹謗中傷の具体的な証拠です。
ネットの誹謗中傷の場合、中傷内容が書き込みされたネットのページ画面です。

ページをプリントアウトした紙、スクリーンショットしたPDFファイルなど、誹謗中傷と確定したページはすべて証拠としてそろえて提出しましょう。
また、そのページの詳細(URL、日付けや時間)もしっかりと記録されていることも大事です。
証拠のページ数が多い場合ただ提出するのではなく、どのような被害をこうむったのか警察側にすぐに理解してもらうために、証拠をわかりやすく整理しておきましょう。

誹謗中傷で警察に相談する作業は、ただ中傷の証拠だけを提示するだけではありません。
誹謗中傷を受けたと自称する自分自身の身分も、しっかりと提示する必要があります。
警察に行く際は、免許証や社員証など、住所・氏名・年齢・職業を証明できるものを用意しておきましょう。
また、警察との相談では、いくつかの書類への記入が求められます。
その際は、手書きによる記入だけでなく印鑑も押さなくてはいけません。
そのため、自分の印鑑を用意しておくことも必要です。
そして、加害者にあたる人物の情報も、分かっていればそれを伝えることによって、相談はよりスムーズにすすめられます。
加害者の住所・氏名・職業などを把握していれば、警察に報告しましょう。

警察での誹謗中傷の相談をする際の手続き

警察に相談する際の具体的な手続きは、被害届か告訴状を提出するという方法になります。
被害届は文字通り、被害を受けたということを警察に届ける申告書です。
警察が被害届の内容を確認して、法律に外れた行為であると認めた場合、警察が実際に動いて加害者を逮捕します。
告訴状は、被害者側がただ被害を受けたと申告するだけでなく、加害者側を処罰してほしいと警察にお願いするための書類です。
告訴状の場合、警察側がこのお願いを受理したあと捜査を開始します。
そして、捜査の結果、犯罪と確定されたら逮捕するという流れです。

告訴状は、加害者側に処罰を与えてほしいという申し立てがある分、被害届よりも効力を発揮します。
また、被害届と告訴状は、どちらも捜査の対象となり得るものですが、被害届は必ず捜査を行わなくてはいけないという義務はありません。
そして、告訴状は捜査をしたあとに、起訴するかどうかを被害者に確認する必要があります。
誹謗中傷のひとつである名誉毀損罪は、決められた期間内に告訴をしなければいけません。
告訴を受け付けている有効期間は、加害者を知ってから6カ月以内です。

この場合の「加害者を知ってから」とは、加害者が誰であるかを特定できてからという意味になります。
加害者の氏名や住所など個人情報がわかっていなくても、加害者が特定できたら「犯人を知った」という扱いになり、告訴期間が起算されるのです。
誹謗中傷の内容によって被害届と告訴状、どちらを提出したほうがいいか事前に考慮することが大切といえます。

誹謗中傷を警察に相談した後はどうなる?

警察にネットによる誹謗中傷の告訴状を提出するという形で相談した場合、その告訴状が受理されたら警察による捜査が開始されます。
そして、捜査による裏付けにより、告訴状によって指摘された加害者に該当する人物が、法律に外れた行為を行ったと確定された場合、その加害者は逮捕されます。
逮捕された加害者は、警察によって身柄を拘束され、留置所に入ることになるのです。

犯罪が軽いものであった場合、加害者はすぐに身柄が解放されますが、重たい事案と決定された場合は、さらに勾留が継続されます。
勾留期間は10日間ですが、捜査が長引いた場合はさらに10日間延長されます。
加害者の勾留中に警察が行うことは、捜査の続行および加害者が起こした犯罪の証拠集めの強化です。
そして、勾留期間が終了したとき、検察官が起訴するかどうかを決定します。

起訴されると刑事裁判が始まって有罪・無罪かが決定されるという流れになり、有罪の場合は刑罰が下されることもあります。
刑罰は懲役刑や罰金刑などがあり、被告人にあたる加害者はその判決に従わなくてはいけません。
誹謗中傷が原因で行う刑事裁判では、損害賠償金を受け取ることはできません。
しかし、加害者側が刑罰を軽くしたいために示談を申し込んでくる場合があり、示談に応じて和解をすれば示談金を受け取ることができます。

誹謗中傷被害を警察に届け出るメリット

誹謗中傷の扱いとなっている名誉毀損罪と侮辱罪は、ふたつの条件を満たすことによって警察が刑事事件として扱ってくれます。
ひとつ目の条件は、犯人を特定してから6カ月以内に告訴すること、ふたつ目は、被害者が自ら警察に相談することです。
特にふたつ目の条件は「名誉毀損罪と侮辱罪は親告罪である」ということを頭に入れていなければいけません。
サイト管理人やプロバイダは、違法的な書き込みであってもすべての情報に目を光らせているわけではありません。
自分以外の人間が警察にかけあってくれるわけではないので、自分から動く必要があります。
このふたつの条件を満たして、警察が被害者の告訴を受理して初めて刑事事件として捜査が開始されるのです。

自らが警察に相談することは、いくつかのメリットをもたらしてくれます。
まずは、警察が介入すると、掲示板などネット上にある悪質な書き込みを削除しやすくなるという点です。
警察からの削除依頼を無視していると、サイトの管理人は逮捕や送検される場合もあります。
それら警察の処分を恐れて削除に簡単に応じる管理人は少なくはありません。
個人・法人が自ら削除依頼などをすすめようと思っても限界がありますが、警察が協力してくれればその強制力によって、問題解決が促進される場合もあるのです。

また、ネット上の誹謗中傷で面倒なのが、匿名性です。
実際に顔を合わせれば加害者がどんな人物なのか特定できますが、ネット上だと顔も住所もわからないので、加害者が特定できません。
特定できないことを理由に、加害者側もますます誹謗中傷を続けるというパターンが多いです。
しかし、ネットの世界は匿名の書き込みを絶対に特定できないわけではありません。

ネットでは、誹謗中傷のあるサイトの管理人に発信者情報(IPアドレス)の開示を依頼すれば、発信者の特定が可能なのです。
通常では情報開示のお願いをしてもIPアドレスは個人情報であるという理由で、サイト管理者も簡単には開示をしてくれません。
しかし、警察から「捜査関係事項照会書」という書類を発行してもらい、それをサイト管理人に提示すれば、IPアドレス開示を比較的スムーズにすすめることができるでしょう。

誹謗中傷の相談を受け付けている警察

ネットの誹謗中傷に関することを警察に相談するには、最寄りの警察署でも問題はありませんが、サイバー犯罪相談窓口」に相談することがおすすめです。
サイバー相談窓口とは、インターネットに関するあらゆるトラブルの解決を目的として設立された窓口で、誹謗中傷を含めたあらゆるネットの悩みを受け付けています。
相談の対象となっているものは、誹謗中傷も含めた掲示板やwebページに関する問題、料金請求、ネットオークション、不正アクセス、ウイルスに関するトラブルなどです。

サイバー犯罪相談窓口やサイバー対策室は全国の警察署にありますが、地方によっては最寄りの警察署にそのような窓口がない場合もあります。
地方の小さな警察署には、窓口がないだけでなくネットのトラブルに関する事例に詳しい人がいないこともあります。
そのため、ネットの誹謗中傷への対応も難しくなるケースもあるでしょう。

しかし、自分の住んでいる都道府県以外の場所にある警察署にサイバー犯罪相談窓口があった場合、そこへ相談をしても、やはり難しい対応をされるケースもあります。
警察署が受け付けているのは、あくまで地元の住民のみであり、他所に在住の人が相談をしても渋い対応をされるのが基本です。
せっかく警察署に足を運んでも、ネットに関するトラブルの窓口がないと無駄足となるので、事前に自分の所在地のどこにサイバー犯罪相談窓口があるか、調べる必要があります。
また、それぞれの警察署のホームページ上にもネットにトラブルの事例が掲載されているので、相談前にチェックする必要があります。

誹謗中傷の相談に対する警察の実際の対応

警察に誹謗中傷の相談をした場合、実際にはどのような対応をされるのでしょうか。
インターネットが普及してネットに関するトラブルや犯罪が急増して以来、全国の警察署もそれに対応せざるを得ない状況となりました。
その結果、サイバー対策の専用窓口を設けるなどの対策を行っていますが、一般的には警察はネット犯罪の取り締まりに関しては積極的とはいえないというのが現状です。
警察への、ネットに関するトラブルの相談件数は年々増えていますが、その件数に対し受理件数は比例していません。
2000年には全国の総相談数は年間で2000件数ほどといわれていたのが、8年後の2008年には年間1万件を突破したといわれ、相談数が急増しています。
しかし、2010〜2012年に相談が受理された件数はわずか200件ほどという数字です。

インターネットの普及およびネットに関するトラブルは、他の犯罪と比較するとまだそれほど歴史が浅く、犯罪として成立するかどうか、警察側は見極めが難しくなっているといえます。
また、警察側もインターネットに関する知識が専門家に比べて深くはないという期間が長かったため、ネットトラブルに関してはどうしても消極的になってしまっているといえます。
また、ネットの誹謗中傷でよくあるケースは、被害者側もネットに関するトラブルが初めてだった場合、どのように対処していいのかわからないというパターンです。
そのため、しっかりとした証拠を用意せずに警察側に相談しても、被害届や告訴状として受理されないケースがあります。
証拠不十分で事件として扱われないというのが、受理されない理由です。

法人や自ら店舗を経営している場合、ネット上でよく見かけるのが利用者の書き込みによる評判や口コミです。
この評判や口コミが、あまりにも目にあまる罵詈雑言である場合、被害届や告訴状を出して対処する個人・法人もいます。
この場合、書き込みをした人の言い分となるのが、日本国憲法で定められた「言論の自由」です。
言論の自由とは、民主主義における基本的な権利の一種で、さまざまな意見や見解は規制されることなく自由に表明できるという権利です。
いくら、辛口な意見・口コミであっても言論の自由に沿って発言しているのだから、何も問題はないというのが書き込み側の主張です。
この場合、実際に法律の範囲内という判断をされて、刑罰として認められないというケースもあります。

警察に相談しても解決しなかった場合はどうすればいい?

警察に相談をしても、事件として認めてもらえなかった場合、あるいは、警察に相談しようにも何をすればいいのかわからない場合、どのような解決策があるのでしょうか。
解決の手段としては、ネットの誹謗中傷に関するプロの専門家に相談をする方法が挙げられます。
ここでいうプロとは、法律に関するプロフェッショナルである弁護士です。
弁護士が運営する事務所はいくつもあり、それぞれ得意分野というものがあります。
そのなかでもネットに関するトラブルを得意分野にして、多くの問題を解決している事務所もあります。
そのような事務所を探し相談や依頼をすれば、心強い味方となってくれるでしょう。

弁護士にお願いするメリットは法律に沿った確かなアドバイスだけでなく、書類作成や交渉ごとも代理で行ってくれることです。
警察や加害者側との交渉や示談・裁判を行う際の一連の代理を担当してくれるので、依頼人はほとんど何もせずに結果を待つだけになります。
一連の手続きのなかでも、告訴状の作成は手間がかかりますが、弁護士に任せておけば法律的な見解でしっかりとした告訴状を作成してくれます。
一連の手続きに関する知識がなくても、すべて弁護士が引き受けてくれるのが、プロにお願いするメリットなのです。
また、法律のプロである弁護士が相手であれば、警察も安心して対応をしてくれることでしょう。
そして、被害届や告訴状、一連の証拠などはすべて弁護士がそろえてくれるので、告訴状などが受理される可能性が高くなります。

また、誹謗中傷を行った加害者に懲役などの判決を下してほしいと希望しても、刑事裁判として取り扱ってもらえないケースがあります。
その場合は、刑事裁判をあきらめて民事裁判を行うという手段も、誹謗中傷を解決するための選択肢のひとつです。
民事裁判では加害者側に懲役などの罰を与えることはできませんが、損害賠償を請求することが可能です。

犯罪として捜査してほしいなら警察へ相談しよう

自らが受けたネット上の誹謗中傷を犯罪であると判断した場合、警察に相談して捜査をお願いする必要があります。
しかし、警察に相談をした場合、誹謗中傷が必ず犯罪扱いされるとは限りません。
そのため、警察よりもまず法律のプロに相談をして、アドバイスを受けながら手続きをすすめるのが、誹謗中傷の解決の近道といえるでしょう。

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