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誹謗中傷対策として効果的な発信者情報の開示請求書

2018年8月20日 公開 更新

監修:第二東京弁護士会所属(第54484号)
中崎 徹人

インターネットなどで誹謗中傷を受けた際などの対策として発信者情報開示の手続きがあります。
これは「発信者情報開示請求書」をサイト運営会社やプロバイダに送り、発信者情報を開示してもらうというものです。

サイト運営会社やプロバイダが開示請求を認めれば主にIPアドレスなどの発信者情報が開示されることがあります。
発信者情報を特定するメリットは誹謗中傷の書き込みの削除要求をする「送信防止措置請求権」とは異なり、投稿者を特定できるということです。投稿者を特定できるということは、今後安易な書き込みを防ぐという効果もありますし、投稿者に損害賠償を請求したり、刑事告訴などの法的措置をとることもできるようになります。

発信者情報開示請求とは?

誹謗中傷対策として検討していただきたい発信者情報開示請求ですが、そもそもこれはどのようなものなのでしょうか。
これはプロバイダ責任制限法で定められているもので、権利を侵害された被害者がサイト運営会社やプロバイダに対して、その発信者の情報の開示請求を行うことができるという制度です。

開示請求書を送りサイト運営者やプロバイダで認められれば、インターネット上で誹謗中傷を受けた場合などに、その人物の住所や氏名を特定するための情報の開示されます。
プロバイダというと一般的にインターネット接続業者と認識している方が多いですが、法律上はサイト運営者はコンテンツ・プロバイダという分類になっています。

インターネット接続業者は経由プロバイダという分類です。
法律上はサイト運営者もプロバイダとされているため、開示請求を受けた場合は対応しなければなりません。

発信者情報開示請求書を書く際は客観的な判断も重要

被害を受けた際に有効な手段といえる発信者情報開示の制度ですが、これは開示請求書を送ったからといって必ず相手を特定できるわけではありません。
権利が侵害されたことが不明確な場合、プロバイダが開示請求に応じないこともあります。
ご自身が「プライバシーを侵害された」「名誉棄損を受けた」と思うような内容であっても、法的に見れば権利侵害とは認められないケースもあるのです。

そのため、開示請求書を書く前にはインターネット上の権利侵害に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。
第三者の目が加わると、権利を侵害されているか客観的に判断することができるからです。

関連記事:インターネット上の誹謗中傷の相談は弁護士に

開示請求書の書き方と注意点

インターネット上で誹謗中傷を受けた場合に犯人特定の手段となる発信者情報開示請求書ですが、書く際には様々な注意点があります。
必要となる情報も不足していては請求できません。
書く際は必要な情報の漏れがないように注意しましょう。

発信者情報開示の請求権を持つのは誰か

発信者情報開示の請求権は権利を侵害された本人か弁護士などの代理人とされています。
請求できるケースはプロバイダ責任制限法で「特定電気通信」において権利を侵害された場合と定められています。

この「特定電気通信」とはインターネット上のサイトで不特定多数の人が閲覧することができる情報発信のことを指し「不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信の送信」と定義されているものです。
この請求を行う場合、権利が侵害されたことが明らかでなければなりません。

そのため、発信者情報開示の請求が認められるためには法的に権利侵害の理由を主張する必要があります。
この権利侵害の理由説明を法的に認められる内容で一般の方が行うのは難しいです。
刑法、民法など法律に詳しくなければ請求をする理由としては弱くなってしまう可能性があります。
本人以外にも弁護士などの代理人にも請求が認められているので、発信者情報開示請求を行うのであれば、インターネット上の誹謗中傷に強い弁護士への相談をおすすめします。

関連記事:誹謗中傷と名誉毀損は弁護士に相談して対策を

発信者情報開示請求に必要な情報とは

開示請求が認められるためには、法的に権利が侵害されたことが明白に証明しなければなりません。
そのために必要な情報としては、次に説明するような情報が必要になります。

まず、権利侵害されたとされる投稿を知るための情報が必要です。
これは、インターネット上のサイトやブログのコメントであれば、そのサイトのURLとコメントを特定するためのNo.が必要になります。
個人のブログなど特定の人物が運営しているサイトであれば、該当の書き込みがあるぺージのURLとブログ名を記載します。
該当の書き込みを特定できる情報を記載した上で、掲載された情報を具体的に書いていきます。内容説明を終えたら、侵害されたとする権利がどのような権利かということを明確にし、その理由も記載しなければなりません。
この権利とはプライバシー侵害や名誉棄損などです。

請求の手順と請求後の流れ

実際に請求を行うとなった場合は、開示請求書を送る際の注意点や請求後の流れを知っておくとスムーズです。
簡単な流れとしては書面での請求後、サイト運営者やプロバイダでの審査が行われ、権利侵害されていると判断されると情報発信者へ意見照会が行われます。

発信者情報と開示請求の流れ

そもそも発信者情報とはどのような情報かということは、法務省令で定められています。
ここで定められている発信者情報とは氏名、住所、メールアドレス、発信者のIPアドレス、IPアドレスと組み合わされたポート番号、携帯端末のインターネット接続サービス利用者識別番号、SIMカード識別番号、タイムスタンプと呼ばれる発信時間です。

ただし、一度の請求でこれらの情報をすべてを知ることは非常に難しく、まずはIPアドレスを知ることが重要になります。
IPアドレスを知ることによってインターネット接続業者の特定ができます。インターネット接続業者であれば発信者情報を保有しているため本人の特定が可能です。
しかし、掲示板のようなサイトへの書き込みは氏名や住所の登録なしにできることも多くあるため、サイト運営会社への開示請求だけでは本人の特定にまで至らないケースが多くあります。

そのため、開示請求を行う際はサイト運営会社へ開示請求を行いIPアドレスの開示を受け、プロバイダの特定をし、プロバイダへ発信者情報開示請求書を送るという流れになります。
これらの一連の流れについて詳しく説明します。

書面でサイト運営会社に開示請求をする

請求をする際は発信者情報開示請求書の他に、有効期限内の本人・法人確認書類のコピーと権利侵害されたとする証拠が必要です。
この証拠とは該当する書き込み内容とURLが分かる画面のスクリーンショットやPDF出力した画像などです。

これらの書類を用意し、簡易書留で郵送します。
郵便事故の恐れがあるため、送付する際は必ず記録の残る方法をとるようにしましょう。

サイト運営者による審査が行われる

発信者情報開示の請求を受けたコンテンツ・プロバイダは、その請求内容について確認と審査を行うことになります。

この時、書類の内容に不備がなく権利侵害と判断された場合でも開示が不可と回答されることがあります。
具体的には、プロバイダが発信者情報を保管していないケースや、申請者からの情報では発信者の特定が難しいケースなどです。

また、権利を侵害していることが明白ではない場合は開示を拒否する通知が送られてきます。
この確認・審査には書類の到着から3、4日程度必要になります。
ただし、発信者から意見が得られない場合など、状況によっては1週間以上かかってしまうこともあると覚えておきましょう。

プロバイダが情報発信者に意見照会を行う

プロバイダが発信者の情報を保持していて、特定可能な状況であればプロバイダから発信者に対して意見照会が行われます。
この意見照会とは発信者情報の開示の可否について確認するものです。

ここで、発信者が情報開示を拒否したとしても、請求内容やその他の事情を踏まえて検討し開示に応じられることもあります。
また、プロバイダが発信者情報を把握していない時や発信者からの返答がない場合はプロバイダが意見照会なしで開示するか否かの決定をすることになります。

プロバイダから発信者情報開示の請求に対する回答がくる

プロバイダから請求内容の確認・審査を終えると通知がきますが、これは開示する場合も非開示の場合もくるものです。
開示の場合は郵送にて発信者情報が知らされます。

非開示の場合は、その旨だけが通知されることになります。
開示されるのは申し立ての内容が明らかという明白性と、申請者が発信者情報を知る必要があるという正当性が認められた場合です。

経由プロバイダへの開示請求を行う

コンテンツ・プロバイダへの請求で特定が難しい場合は、特定できた情報(主にIPアドレス)をもとに経由プロバイダの特定を行い、その経由プロバイダへの請求を行います。

発信者情報の開示請求を行っても開示されない場合

発信者情報開示請求書を行っても、コンテンツ・プロバイダも経由プロバイダも利用者の個人情報を守る義務もあるため開示を拒否されることも珍しくないものです。
そのような場合は、仮処分の申し立てを裁判所に行い裁判所で正当性が認められれば開示命令を出してもらうことができます。

発信者情報開示請求はスピードが大切

書き込みの削除依頼をする送信防止請求と異なり、発信者情報開示請求は発信者を特定することで、それ以上の被害を防ぐことが可能です。
そのため、インターネットでの誹謗中傷被害に効果的な手段ですが、発信者情報開示請求をする場合はスピードが大切になります。

発信者を特定するために必要となるログなどの情報の一部は一定期間を過ぎると削除されてしまうからです。
ログであれば情報の保存期間は長くても半年程度とされています。
削除されてしまっては特定もできなくなるため、発信者情報開示請求の手続きはスピードが命と言えます。

インターネット関連の案件に強い弁護士に相談をおすすめします

スピードが命といえる発信者情報開示には、インターネット関連の案件に強い弁護士に相談するとスムースです。
開示請求書書き方が分からない、法律上どのような権利が侵害されているのかなど専門家ではないと分かりにくいことも多く、迷っている間にログが削除されてしまうと発信者を特定できなくなってしまいます。
そのような事態を避けるためには初めから弁護士に相談しておくとスムースでしょう。

関連記事:ネット誹謗中傷はどこに相談する?弁護士・警察・法務局・業者の違いを徹底解説!

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