SNSの普及により、誰もが簡単に自分の意見を主張できるようになりました。
しかしその手軽さ故、行き過ぎた自己主張や表現が誹謗中傷となってしまうケースも少なくありません。
SNSで誹謗中傷されたときは、怒りや悲しみで冷静さを欠かないように対処することが大切です。
犯罪となる誹謗中傷の例、SNSへの書込みの削除や犯人特定方法、慰謝料請求の流れなどを知っておけば、自分が被害者になったときに冷静に対処することができるでしょう。
この記事ではSNSの誹謗中傷はどう対処したらいいの? 削除する方法の極意7ヶ条ついて解説していきます。
目次
SNSにおける誹謗中傷とは
SNSにおける誹謗中傷について考える前に、まずは「誹謗中傷」という言葉について復習していきましょう。
「誹謗」と「中傷」はもともと別の言葉であり、「誹謗」には「悪口を言うこと」という意味が、「中傷」には「根拠のないことを言って他人の社会的評価を下げること」という意味があります。
すなわちSNSにおける誹謗中傷とは、根拠のない嫌がらせや悪口などを投稿することで、他人の名誉を傷つけることを指しているのです。
度が過ぎた誹謗中傷行為を行った場合は、名誉毀損罪、侮辱罪、信用毀損罪、業務妨害罪などの罪に問われることがあります。
各種SNSでよくある誹謗中傷の事例
SNSと一口に言っても、さまざまなSNSが存在しています。
SNSの持つ特徴や機能によっては誹謗中傷の内容も異なってくるため、それぞれの事例について把握しておくことが大切です。
代表的なSNSでは、どのような誹謗中傷の事例があるのか見ていきましょう。
Facebookは実名登録が基本です。
そのため他のSNSよりも現実の交友関係と近く、誹謗中傷によるダメージも実生活に影響を及ぼしやすいと言えるでしょう。
そんなFacebookで多いのが、他人の投稿やコメントへの批判による誹謗中傷です。
人はそれぞれ異なった意見や考えを持っているため、多少の批判ならば仕方がないという意見もありますが、執拗な批判は攻撃と変わりありません。
相手の名誉を傷つけるほどの批判は、誹謗中傷とみなされます。
また、画像の投稿が他人を不快にさせたり、プライバシー権の侵害となったりするケースもあります。
特に相手に許可なくタグ付けして画像を投稿する行為は、相手のプライバシーを侵害する行為といえます。
さらに悪質なものだと、他人の本名で勝手にアカウントを作ったり、アカウントを乗っ取ったりして、その人の名誉を傷つけるような投稿を本人になりすまして行うケースも発生しています。
Twitterは匿名で利用できるSNSであり、利用者数が非常に多いSNSです。
簡単に投稿・リツイートが可能なため、誹謗中傷のトラブルが発生しやすく、拡散されて無視できないほど大きなダメージを受けてしまうことも珍しくありません。
Twitterにおける誹謗中傷の事例としては、投稿に対する悪口や、個人に対する非難を盛り込んだ投稿などがあります。
匿名性があることや簡単に投稿できる点が、Twitterでの誹謗中傷の原因とも考えられるでしょう。
中にはサブアカウントをわざわざ作成して、悪口の投稿に利用するケースもあります。
その他に、Twitterでもアカウントの乗っ取りやなりすましが可能で、それを悪用して誹謗中傷を行う人もいますし、本人が隠している個人情報を嫌がらせで暴露して、プライバシーを侵害する人もいます。
画像や動画の投稿に特化したSNSであるInstagramでは、投稿に対してのコメントで悪口を書かれるケースが多いです。
特にアカウントを誰でも見れる状態にしておくと、多くの人の目に触れてフォロワーが増える反面、誹謗中傷をしてくるアンチも増えてきます。
心無い言葉を書き込まれるのはもちろん精神的苦痛を受けるものです。
しかし、性質が悪い場合は個人情報まで書き込まれてしまい、多くの人にプライベートなことまでさらされるという被害も発生しています。
Instagramには誹謗中傷をする相手をブロックする機能がついていますが、ブロックされた同一人物が再び攻撃するために、別アカウントを作って執拗に誹謗中傷を繰り返すケースも見られます。
SNSでの誹謗中傷!法律上どんな罪に問われるの?
迷惑行為や危害を与える行為は法律で罪として問えるように、誹謗中傷行為も罪に問うことができます。
誹謗中傷への対処方法を決める上でも、どのような罪に該当するのか知っておくことは大切です。
誹謗中傷はどのような罪に問われるのかを見ていきましょう。
名誉毀損罪
名誉毀損とは、事実を示して他人の社会的評価をおとしめるような行為のことを言います。
具体的には、「~~は犯罪者」「~~は~~と不倫している」などの虚偽の事実を言い触らすことなどが該当します。
ただし、名誉毀損罪において大切なのは、言い触らした事実が虚偽かどうかではなく、相手の社会的評価を低下させたかどうかです。
したがって、いくら誹謗中傷の内容が真実であったとしても、その内容が社会的評価を落としたと判断されれば、名誉毀損罪に問われる可能性があります。
名誉毀損罪が成立する場合、懲役や罰金などの刑事的な責任だけでなく、慰謝料の支払いなどの民事的な責任も発生します。
そのため、あまりにもひどい内容の誹謗中傷を行った人は、懲役や禁固刑を科された上に慰謝料の支払いを求められる可能性が十分にあるのです。
関連記事:ホスラブで源氏名でネット誹謗中傷を受けても名誉毀損になる?
侮辱罪
SNSでの悪口は、必ずしも事実を示した上で行われるものとは限りません。
しかしそのような場合でも、侮辱罪ならば罪に問うことができます。
侮辱罪とは、「~~はバカだ」「~~はブサイク」など、相手を汚い言葉で罵倒する行為に対する罪です。
名誉毀損罪とは違って、人の社会的評価を低下させるような事実を公にさらしたという前提がないので、侮辱罪ならば単純な罵倒の言葉に対しても訴えを起こすことができます。
侮辱罪は刑法上の罪なので、侮辱罪が成立すると拘留または科料に科せられるおそれがあります。
プライバシー権の侵害罪
住まいや勤務先などの個人情報を本人に許可なく公開し、他人に知られるような状況となっている場合は、プライバシー権の侵害にあたり法的な責任が発生します。
また、住所や電話番号をさらす以外にも、「~~は私生児」のような書き込みも、場合によってはプライバシー権の侵害とみなすことが可能です。
プライバシー権の侵害は刑法で罰する規定がないので、民事として扱われます。
そのため、プライバシー権の侵害を行った人は被害者から慰謝料を請求されるおそれがあり、それを拒んでいると民事訴訟で裁判所から支払い命令が出される可能性もあるのです。
名誉毀損罪に該当する誹謗中傷であれば、無実を証明することで名誉の回復が期待できます。
しかし、SNSでの個人情報の流出は簡単に拡散されてしまうため、プライバシー権の侵害による被害は、簡単になかったことにできるものではありません。
少しでも拡散を食い止めるためには、早急に手を打つ必要がある誹謗中傷だと言えるでしょう。
脅迫罪
SNS上で他人に対して脅しと思われる書き込みをした場合には、脅迫罪が成立する可能性があります。
脅迫罪の対象となる脅迫とは、「生命」「身体」「自由」「名誉」「財産」の5つに関するものです。
「生命」と「身体」は比較的想像しやすいでしょうが、「自由」「名誉」「財産」に対する脅迫はイメージしづらいかもしれません。
具体例を挙げると、「自由」に対しての脅迫ならば「お前のことを誘拐してやる」、「名誉」に対しての脅迫ならば「横領していると暴露するぞ」、「財産」に対しての脅迫ならば「お前の家に火をつけてやる」などがあります。
脅迫罪は本人またはその親族に対する脅迫のみに限定されているため、友人や恋人への脅迫は脅迫罪として成立させることができないので注意が必要です。
信用毀損罪
名誉毀損罪は真偽にかかわらずある事実を示すことにより他人の社会的評価を低下させることで成立する罪でしたが、信用毀損罪は虚偽の情報を流したり、第三者を騙したりすることによって相手の信用を毀損した場合に成立する罪です。
信用毀損罪が成立する投稿としては、「あの会社は倒産寸前だ」「○○は産地偽装している」などが考えられます。
もし投稿内容が真実であれば信用毀損罪には問われませんが、名誉毀損罪に問われるおそれはあります。
信用毀損罪とよく似た罪で業務妨害罪というものがあります。
信用毀損罪は被害者の信用を保護する目的の法律であるのに対し、業務妨害罪は被害者の業務が保護の対象です。
そのため、対象者の業務を妨害するような内容の誹謗中傷が行われた場合には、信用毀損罪のみならず業務妨害罪でも罪に問われるケースが多いです。
SNSで誹謗中傷されたときにとるべき対策とは?
SNSで誹謗中傷された際に誤った対処を行うと、相手の書き込みを助長させたり、誹謗中傷の内容が拡散されたりして、自分のアカウントが炎上してしまうことも十分に考えられます。
SNSで誹謗中傷されたときは、どのような対策を取るべきか把握しておきましょう。
無視・ブロック・鍵をかける
SNSでの誹謗中傷と一口に言っても、被害のレベルはさまざまです。
気にならない程度の誹謗中傷であれば相手のアカウントをブロックするなどして、基本的には無視するのが望ましいとされています。
下手に反論などをすると、相手が逆上して誹謗中傷が悪化することも考えられます。
また、書込みの削除などは面倒な手続きが必要になるので、なるべく手間をかけないためにも、とりあえずは無視やブロックで様子を見ましょう。
誹謗中傷がすでに広がってしまっている場合、悪意のあるアカウント全てをブロックしていくわけにいきません。
そのような場合は、自分のアカウントや投稿が限られた人にしか見られないよう、鍵をかけるというのも一つの手です。
書込みの削除
自分の投稿に無視できないような悪口などの誹謗中傷のコメントがつけられている場合は、書込んだ張本人やSNS管理者に削除依頼をしましょう。
ほとんどのSNSにはメッセージ機能がついているので、メッセージ機能を利用して書込み主への削除依頼を行います。
SNS管理者へは、問い合わせフォームなどから削除依頼することが可能です。
自分で削除依頼をするのが困難な場合や、削除依頼に応じてもらえない場合は、ネットトラブルに詳しい専門家に相談してみましょう。
書き手の特定
誹謗中傷を行った人に慰謝料などの責任を取ってもらいたい場合、犯人を特定する必要があります。
そのためには、アカウント名などの犯人の情報がわかるものをスクリーンショットなどで残しておくことが大切です。
犯人に不都合な展開になったらアカウントを削除して逃げられる可能性もあるので、しっかりと証拠を残しておきましょう。
犯人の情報が何もつかめない場合、SNS管理者に犯人のIPアドレスを開示してもらうのも一つの手です。
ネットに強い弁護士などに依頼してIPアドレスを解析してもらえば、犯人を特定することができます。
SNSの誹謗中傷における慰謝料・損害賠償の請求について
SNSでの誹謗中傷で、名誉毀損罪などの法的な権利侵害が認められれば、慰謝料や損害賠償の請求が可能です。
慰謝料の金額は誹謗中傷の内容によって異なってきますが、相場は10~50万円ほどとなっています。
慰謝料が相場よりも高額となるケースとしては、事業主が名誉毀損を受けた場合、ヌード写真の公開によりプライバシーを侵害された場合、マスメディアにより権利侵害を受けた場合などが挙げられます。
弁護士に請求を依頼する場合は弁護士費用が必要となるので、よく検討してから依頼しましょう。
関連記事:日常的に第三者から受けたネット誹謗中傷の慰謝料相場は?
SNSの誹謗中傷を受けたらどこに相談すればいいの?
SNSでの誹謗中傷を受けた際には、いくつかの相談先があります。
それぞれがどのような対処や援助をしてくれるのか知っておくことで、スムーズに対処法を見つけることが可能です。
誹謗中傷に対処してくれる機関にどのようなものがあるのか説明していきます。
関連記事:ネット誹謗中傷はどこに相談する?弁護士・警察・法務局・業者の違いを徹底解説!
法務局
法務局は日本中に支局があり、SNSの誹謗中傷により人権を傷つけられたときなどに相談することが可能です。
削除依頼してもらえる内容か判断してくれたり、削除依頼する場合はどのようにすれば良いか教えてくれたりします。
被害者が高齢者や病人などの理由で削除依頼が困難な場合や、個人で削除依頼したにもかかわらず対応してもらえなかった場合などは、法務局が代わりに削除依頼を行ってくれることもあります。
警察
SNSでの誹謗中傷を警察に相談する場合は、サイバー犯罪窓口というネット上のトラブルに特化した窓口を利用するのが望ましいとされています。
この窓口以外でも対応してくれますが、ネットに詳しい人がいない警察署も少なくないので、適切に対応してもらいたいのならば、まずはこの窓口に相談してみましょう。
SNSでの誹謗中傷が犯罪に該当すると判断されれば、警察は逮捕に向けて動き出してくれます。
そのためには、被害届や告訴状を作成する必要があり、誹謗中傷を受けた証拠なども必要となります。
弁護士
弁護士に相談すると費用は発生しますが、誹謗中傷投稿の削除依頼方法を教えてくれるだけでなく、削除の仮処分や書込み主の特定など、個人では難しい手続きを行ってもらえるケースが多いです。
SNSでの誹謗中傷に悩んでいると、投稿の削除依頼を代行してくれる業者を目にすることがありますが、このような代行業者を利用する場合は注意しましょう。
削除依頼を本人または弁護士以外が行うのは、非弁行為となり違法です。
違法な業者に依頼しないよう、代行業者が弁護士資格を持っているかどうか事前に確認する必要があります。
SNSでの誹謗中傷に正しく対処しよう
SNSは強い拡散力を持っており、それに伴い誹謗中傷の被害も大きくなっています。
そんなSNSの誹謗中傷による被害を少しでも小さいうちに食い止めるには、早急に正しい対処を行うことが大切です。
自力で誹謗中傷が書かれた投稿の削除を依頼することは可能ですが、弁護士に依頼するより確実性がない上に、時間もかかってしまいます。
早急にトラブルを解決したいのならば、自分が受けた誹謗中傷の内容が法律上どのような問題があるのかを確認した上で、弁護士への相談を検討してみましょう。